2010年8月5日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
昼前、ごみを出していたら呼ぶ声がします。隣家の70代の女性でした。そばの月ぎめ駐車場に、向かいの家の男の子といっしょにいます。彼は小学2年生▼お年寄りの男性が車を動かせなくて困っている、とのこと。行ってみると、運転席で男性が汗だくの悪戦苦闘。駐車場を借りているのではなく、迷い込んだらしい▼行き先を聞く。しかし、思い出せません。運転免許をもつ、男の子のお母さんに加勢を頼みました。たまたま仕事が休みの彼女が来て、車を道路へ出す。彼女が車を降りたとたん、男性がアクセルを踏みました▼路地の角を曲がり、狭い一方通行の道を逆走する。「危ない!」。みんなで駆けつけると、対向車を前に危ういところで止まっている。車を路地に戻し、ぐったりする男性に水を飲んでもらっているとき、彼の携帯電話が鳴りました▼隣家の女性が、迷いつつ電話をとる。男性の妻からでした。男性はその日、老人施設に入るところでした。妻の運転で施設に着いた直後、すきをみて車を走らせた、といいます。ほどなく、妻を乗せた施設の車が迎えに来ました。彼女が語りました。「夫の認知症が急にひどくなって。前は運転も上手だったのに…」▼男の子が最初、困っている男性に「おじさん、どうしたの?」と声をかけ、隣近所を寄り合わせました。翌日、大阪からニュースが届きました。幼児2人が母親に置き去りにされ死亡したマンションの若い住人たちが、「なぜ救えなかったか」を話し合うため集まる、と。