2010年8月4日(水)「しんぶん赤旗」

主張

口蹄疫終息へ

本格的な再生へ、国の責任を


宮崎県をはじめ全国に大きな衝撃をもたらした口蹄疫(こうていえき)の感染が、ようやく終息に向かうことになりました。宮崎県知事は7月末「非常事態宣言」を解除、8月末の終息宣言に向けて、安全確認などを急いでいます。

 4月20日に発生が確認された口蹄疫は、感染が宮崎県内にとどまったとはいえ、29万頭にも及ぶ牛と豚が殺処分され、畜産業と関連産業、地域住民の生活に大きな被害をもたらしました。激発地域では発生農場の周辺10キロメートル以内で飼われていた牛と豚のすべてが殺処分されるなど、過去にない感染の広がりです。

これからが正念場

 手塩にかけた家畜を殺処分しなければならなかった飼育農家の苦衷は、想像を絶するものがあります。心からお見舞い申し上げるとともに、再生に向けた支援に全力をあげることを訴えます。

 現段階は再生に向かう第一歩であり、多くの課題が残されています。これからが正念場です。

 飼育農家との関係では、被害にたいする損失を補てんするとともに、当面の生活を保障し、再建のための条件を整えることが急務です。口蹄疫ウイルスを完全に撲滅するために、畜舎の消毒や堆厩肥(たいきゅうひ)の無菌化の徹底も不可欠です。

 そのうえで、すべての家畜を殺処分した肉牛生産者が収入をえられるまでには最低でも1年を要し、元に戻るのに数年かかるなど、長期の時間を要する畜産の条件にあわせた支援を行うことです。畜産農家の再生対策とともに、家畜市場や関連産業、地域経済の立て直しにも国と自治体の積極的な役割発揮が求められています。

 同時に不可欠なのは、今回の感染原因の特定と侵入防止対策の抜本的強化です。感染の経路はある程度解明されてきましたが、日本への侵入経路は不明のままです。発見の遅れや初動での不備、被害を大きくする要因とされている豚への感染を防ぐ問題など、再発を防止するうえで解明されるべき課題が残されています。

 政府や宮崎県も、殺処分した家畜の損失補償、移動制限や家畜市場の閉鎖による価格の低下や飼料代の補助、再開から販売収入を得るまでの畜産への助成、優良家畜導入への支援などを打ち出しました。補償水準や早期に支払う仕組み、家畜導入への援助など改善された部分も少なくありませんが、かつて経験したことのない被害規模であり、前例にとらわれない救済策が必要です。先の国会で成立した「口蹄疫対策特別措置法」による地域経済再生と活性化を図る「基金」の設立も急がれます。

関係者の努力にこたえて

 改正が求められている「家畜伝染病予防法」をめぐっても、殺処分や移動制限などへの国の権限強化にとどまらない検討が必要です。とくに海外からの侵入防止や感染防止などへの国の責任が明確にされるべきです。

 急速に感染を広げた要因として、初期対応の遅れに加え、大規模経営の集中や輸入飼料への依存などが指摘されています。国産飼料の増産とあわせた地域の水田・畑作と畜産との結びつき、家族経営を中心に環境への負荷が少ない経営が成り立つ条件の拡大、和牛改良の成果の継承など、関係者・地域の努力を生かしつつ、将来につながる再生策の実施を求めます。





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