2010年8月3日(火)「しんぶん赤旗」
主張
「辺野古」新基地
VでもIでも県民は認めない
沖縄県宜野湾市の米海兵隊普天間基地を「移設」するため、名護市辺野古に建設予定の「新基地」の配置や工法についての検討が進んでいます。政府からは今月末までに日米の専門家でまとめる報告書では滑走路を2本とする「V字」案と1本とする「I字」案の両論を併記するとか、最終決定は11月に予定される沖縄県知事選の後などの意向が伝えられています。
しかし肝心なのは、普天間基地を県内に「移設」することではなく、県民が望むように無条件で撤去することです。県内「移設」を条件とする日米合意を白紙撤回することこそ県民・国民の願いです。
無条件撤去をまず前提に
宜野湾市の住宅密集地に位置する米海兵隊普天間基地は、先週、福岡高裁那覇支部で出された普天間基地爆音訴訟の判決でも深刻な被害が認められたように、爆音や墜落の危険が日常的に市民生活を脅かしている危険な基地です。アメリカでさえ「世界一危険な基地」と認めているほどです。
普天間基地の撤去はすでに14年前、日米両国政府で決められています。ところが両政府があくまでも普天間基地に代わる基地を要求したため、この14年間返還は実現しませんでした。危険な普天間基地を撤去し、住民の安全を守ることを優先するなら、「移設」先探しをやめ、普天間基地を直ちに閉鎖、撤去すべきです。
宜野湾市民だけでなく、沖縄県民はこれまでも繰り返し、いわば「島ぐるみ」で、普天間基地の撤去を求めてきました。民主党が昨年の総選挙で普天間基地の「国外、最低でも県外」への移設を公約したのも、こうした県民の声に応えなければならなかったためです。にもかかわらず鳩山由紀夫前政権は公約を裏切り県内「移設」を米と合意、県民の批判のなか、退陣しなければなりませんでした。
参院選挙投票の直前、沖縄県議会が可決した決議は、普天間基地県内「移設」の日米合意は「沖縄県民の総意をまったく無視するもの」だと、その見直しを要求しています。いま政府が耳を傾けるべきはこうした県民の声であり、県民の意思に反して日米政府が県内「移設」の具体化を進めるなど、言語道断です。政府は直ちに「移設」目的の「新基地」案作りをやめ無条件撤去に踏み出すべきです。
新基地の配置や工法がV字案になろうがI字案になろうが、サンゴやジュゴンが住む辺野古の海を埋め立てて普天間基地を上回る広大な「新基地」を建設する以上、住民の暮らしにも環境にも深刻な被害を及ぼすのは目に見えています。沖縄県内での基地のたらいまわしでは、全国の米軍基地の75%が国土面積でわずか0・6%の県内に集中する異常は解決しません。県民の負担軽減のためにも、米軍基地は県内でたらいまわしするのではなく撤去すべきです。
先送りで県民ごまかすな
菅首相は就任以来、日米合意の実行を、繰り返しアメリカに約束しています。それでいながら、8月末までに決める「新基地」の規模や工法は両論を併記するとか最終結論は知事選後に先送りするなどとごまかしているのは重大です。
県内「移設」の日米合意はきっぱり撤回すべきです。先送りしたふりをしながらことを進めるなどというのは、県民・国民を裏切るものでしかありません。