2010年8月2日(月)「しんぶん赤旗」
米陸軍自殺者160人 最悪
対策報告書を発表
【ワシントン=小林俊哉】米陸軍はこのほど、兵士の自殺が急増している問題で、250以上の提言をまとめた報告書を発表しました。アフガニスタン、イラクでの9年にわたる二つの戦争で、兵士の自殺が記録的水準に高まっていることを受けたものです。
報告書によると、陸軍での自殺者は2009年度(08年10月〜09年9月)で過去最悪の160人。このうち、過度の飲酒や薬物の摂取などに起因する死者は146人にのぼります。自殺や事故による兵士の死者が戦闘で死亡した兵士よりも多いとして、「われわれ自身が敵よりも危険な存在となっている」と指摘しています。自殺未遂も1700件を超えました。
自殺率は04年以来増え続け、10万人当たり20・2人。全国平均の19・2人を上回っています。過去5年間では、自殺者のうち過度の飲酒や薬物摂取の経験がある者は約3割に達しました。心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受けていた者は、平均9%ですが、05年の4・6%から09年には14・1%に急増しています。
戦争長期化規律が低下
報告書は自殺や危険行為につながるストレス要因として、任務の過酷さや、戦地への派遣が繰り返されること、孤立感などを挙げています。
一方、長期化する戦争のために兵士を確保する必要から、志願者を採用する際の基準が、事実上緩んでいるとも指摘。薬物や飲酒問題、犯罪歴がある者も4万7000人が採用されたとしています。
兵士の疲弊とともに、規律が低下していることをうかがわせます。
自殺者も戦争の犠牲者
平和のための退役軍人会(VFP)
リア・ボルガー副会長
私たちは、兵士の自殺者が多数に上ることに驚き、悲しんでいるとともに、これらの人々も戦争の犠牲者だと考えています。米軍は、カウンセリングの強化などを通じて、自殺問題に対処しようとしていますが、戦争そのものが抱える真の問題には目をつむったままです。戦争は、すべての者にとりかえしのつかない害をもたらすのです。VFPは、オバマ大統領に対し、いまこそ、すべての駐留軍隊をアフガニスタン、イラクから直ちに撤退するよう求めます。