2010年8月1日(日)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
蒸し暑い7月最後の日でした。部屋の中で、滴る汗を何度もぬぐう。梅雨時の6月、閉め切った狭い1部屋マンションに閉じ込められた幼児たちも、どんなに蒸し暑かったでしょう▼3歳の女の子と1歳の男の子。服を脱いだ姿でみつかったとき、すでに死後1カ月ぐらいたっていました。母親が置き去りにしたという2人。お腹(なか)がすいて、心細くて、息苦しくて…▼泣き叫びました。そして、よびかけました。「ママー、ママー!」。幼い2人に、ほかになにができたでしょう。声だけが生きる頼り。声は、マンションの住人たちに届いていました。管理会社に通報する人もいました▼大阪の、にぎわうあかぬけた街の一角に立つマンション。しかし、やがて声がやみます。息絶えた2人に、他人をよぶすべは異臭しかありませんでした。母親の去る前から「虐待では」と通報を受けていた児童相談所も、幼い命を救えませんでした▼離婚し、夜に働きながら2人を育てていた母親。「子どもなんかいなければいいと思うようになった」と話している、といいます。母親が2人を捨てる前の5月、国連の「子どもの権利委員会」が、日本の子どもの実情について指摘しました▼驚くべき数の子どもが幸福感の低さを訴えている。親および教師との関係が貧しいからだ。「関係の貧しさ」のわけは、子どもの福祉と発達を保障する予算配分が明らかになっていない、貧困が片親家庭を直撃している…。だとしても、あまりにもむごい2人の最期です。