2010年8月1日(日)「しんぶん赤旗」
主張
菅首相暴走発言
民意締め出す比例削減許さず
参院選の結果を受けて始まった臨時国会の冒頭、記者会見した菅直人首相が、衆院の定数を80、参院の定数を40削減する方針について、8月中に民主党内の意見を取りまとめ、12月までには与野党で合意を図ってもらいたいと、民主党の枝野幸男幹事長、輿石東参院議員会長に指示したことを明らかにしました。
参院選での国民の厳しい審判に対する答えが、まず、国民の意思を国会から締め出す定数の削減とは言語道断です。事態は一気に緊迫しています。民主主義を守りぬくため、力をあわせ、力を尽くすことが急務です。
国民の審判ねじ曲げる
民主党は参院選のマニフェスト(政権公約)で、「参院の定数を40程度削減します」「衆院は比例定数を80削減します」と掲げました。しかし、国民がそうした定数削減を支持したとはとてもいえないことは、参院選での民主党の大敗を見れば明らかです。菅首相は選挙総括で、みずからの消費税増税発言が大きく影響したことを認めています。だからといって、まず「無駄の削減」だと、国会議員の定数削減を持ち出すのは、国民の審判を勝手にゆがめ、ねじ曲げるものでしかありません。
菅首相が記者会見で明らかにした衆院の定数80削減は、民主党の公約に照らせば比例定数の削減ですが、衆院の比例定数の削減は、選挙中も民主党だけがいったことです。日本共産党や、公明、社民両党は、比例定数の削減に反対しました。自民党の石原伸晃衆院議員は選挙中「少数政党に不利な比例の部分だけ削るのは反対」と発言し、みんなの党の渡辺喜美代表も「比例だけ削減するとかいうのはだめ」とのべています。12月などと期限を定めて与野党の合意を図るなどというのは、民主党の一方的で勝手な言い分です。
現在の衆院の選挙制度で議員の定数は1選挙区から1人の議員を選ぶ小選挙区が300、全国11ブロックに分かれる比例代表が180となっています。比例代表の定数は当初200でしたがすでに1割削減されました。小選挙区は大政党しか当選できず大半の投票は議席に結びつかない「死に票」になります。民意を議席に正確に反映する選挙制度は比例代表だけで、その後退は許されません。
もし民主党がいうように比例代表の定数を80削減すれば、比例の定数は100になり、衆院の400の定数のうち4分の3は小選挙区で選ぶことになります。国民の民意はいよいよ国会に届かなくなり、国民の間では多数派の消費税増税反対の声も、普天間基地無条件撤去の声も、国会の議席では少数派にされてしまいます。
民主党の「独裁」許さない
参院選の結果、衆参の議席は与野党でねじれた状態になりましたが、民主が衆院で3分の2の議席を占めれば、参院で否決されたどんな法案も、衆院で再可決すれば成立することになります。まさに比例定数削減は、民主党の「独裁」に道を開くことにもなります。
選挙制度や議会運営の問題は民主主義の基本であり、政治的立場は異なっても、民主主義の破壊を許さず、それを守るために力を尽くすことが重要です。いまこそ比例定数削減の危険な動きを阻止するために、党派の違いを超えて力を合わせることが求められます。
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