2010年8月1日(日)「しんぶん赤旗」
比例定数80削減で…
民主42%の得票で68%の議席
少数政党締め出す恐れ
菅直人首相が枝野幸男民主党幹事長らに「8月中に民主党内でとりまとめ、年内の与野党合意」を指示した国会議員の定数削減問題。衆院で比例定数を80、参院では40程度減らそうという内容です。比例定数削減はどのような事態を生み出すのでしょうか。
いま衆院の総定数は480議席です。このうち、300議席は定数1の小選挙区で選び、残りの180議席を全国を11に分けた比例ブロックで選びます。
民主党案はこの比例部分を80削減し、定数100にしようというもの。各ブロックの定数は四国で6→3、北海道で8→4、中国で11→6、北陸信越で11→6など大幅に減り、民意を正確に議席に反映する比例代表制の長所が大きく損なわれ、大政党に有利な仕組みに“変質”してしまいます。総定数に対する小選挙区の比重は62・5%から75%に一挙に高まり、これまで比例代表で議席を得ていた少数政党が締め出されるおそれがあります。
民主党が主張する比例定数80削減がいかに民意を切り捨てることになるか。2009年総選挙結果で試算するとその害悪が浮かび上がります。
民主党は比例代表42・41%の得票率で、小選挙区も含め衆院議席の68・50%を占め、1党だけで3分の2以上の議席を得ることになります。自民党の議席占有率は比例得票率とほぼ同じ。一方、日本共産党はじめ、ほかの党は30・86%の比例得票率を得ながら、議席はわずか8%に押し込められます。
民主単独で「再議決」可能
比例定数80削減によって民主党単独で3分の2以上の議席を占める―これは何を意味するのでしょうか。
先の参院選結果、野党が参院で過半数を占め、衆院では民主党など与党が過半数を維持する与野党逆転となっています。
菅首相が「与野党が合意をしなければ法案が通らない、政策が実行できない」(7月30日の記者会見)と述べたように、政府・与党提出の法案が衆院で与党の賛成多数で可決できても、参院で野党が反対すれば法案は成立しません。ところが、図下のように、参院で否決されても、衆院で3分の2以上で再議決し、成立させることができます。(憲法59条)
07年の参院選で過半数割れとなった当時の自民・公明の与党は参院で法案が行き詰まると次々再議決を使い、海外での自衛隊の武力行使に道を開く「海賊対処」派兵法や新テロ特措法、大企業優遇減税を優先する租税特措法などの成立を強行してきました。民主党の3分の2以上の議席占有は、参院で法案が否決されても、同党単独で再議決が強行できることになります。まさに「一党独裁」です。
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