2010年7月31日(土)「しんぶん赤旗」

主張

大学予算の1割削減

教育・研究の崩壊を招く暴挙


 政府が決めた来年度予算案の概算要求基準で大学予算が一律1割削減の対象となっています。これが現実になれば国立大学の運営費交付金は1000億円以上の削減となり、その規模は小規模な国立大学29校分の予算に該当します。私立大学の経常費補助も320億円以上の削減となり、大手私立大学6校分の交付額に匹敵します。

 まさに「大学崩壊」ともいえる事態を招きかねません。大学関係者から「我が国の知的基盤を破壊する」と、きびしい批判の声があがっているのは当然です。政府はこうした声に耳を傾け、大学予算の削減を中止すべきです。

大学関係者の期待裏切る

 国立大学ではすでに「構造改革」による法人化以来の6年間で大学の日常的運営をささえる運営費交付金が830億円も削減され、「教員の教育研究費が激減し教材を私費で賄っている」「人件費削減で教員ポストが減り一部の授業を閉鎖した」など、重大な支障がうまれています。中小の大学では存立さえ危ぶまれる深刻な危機においこまれています。

 そうしたなかでさらに1割もの削減を強行することは、国立大学の教育・研究の機能が停止しかねない事態をうみだします。民主党は昨年の総選挙で「運営費交付金の削減方針を見直す」と主張していただけに、大学関係者の期待を根本から裏切るものです。

 日本の学生の74%を擁する私立大学では、「経常費の2分の1を補助する」とした1975年の国会決議に反する国庫補助の連続削減によって、経常費に占める補助の割合は11%に低下しています。教育・研究条件の国立との格差の拡大、中小規模の大学・短大での「定員割れ」による経営困難などの事態がひろがっています。国際的にも異常な高学費は負担の限界を超えており、経済的理由で進学をあきらめる若者が急増しています。

 私立大学がはたす公共的役割にふさわしく国の支援を強め、国庫補助を抜本的に増額することこそ、関係者の悲願です。国庫補助の1割削減は、こうした願いを踏みにじるものにほかなりません。

 大学の教育・研究の発展は「国家百年の計」であり、将来をみすえた大学への投資こそ、次代をになう若者をはぐくみ、21世紀の社会発展をうながすものです。いま政治に求められているのは、そうした立場にたって大学の危機を打開し、その発展を応援する政策に切り替えることです。短期的な効率主義で大学予算を削減するのではなく、先進国でも最低の水準にとどまっている大学予算を、欧米並みに引き上げることです。

危機打開の展望示す提言

 日本共産党が6月に発表した大学政策の提言は、こうした見地から国立大学の運営費交付金の削減をやめ法人化前の水準を回復すること、私立大学に国立と同様に公費を支出する原則を確立し、大幅な国庫助成を実現することを提起しています。また、学費免除や給付制奨学金の創設などをはじめ、高等教育の段階的な無償化へふみだす方策を示しています。

 この方向にこそ大学の深刻な危機を打開する確かな展望があります。日本共産党は大学関係者のみなさんと共同し、大学予算の大幅削減という暴挙を中止させるとともに、この政策提言を実現するために、力をつくす決意です。





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