2010年7月30日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
切り抜いて、ずっと持ち歩いている投書があります。7月12日付の本紙「読者の広場」に載りました。短い。およそ100字です▼読まれた人も多いでしょうが、あらためて紹介します。「地デジ実験があった。わが家のテレビは、来年は映らなくなるらしい。/この際、思い切ってテレビとさよならをする。とりあえず、テレビを見るまえに食っていかねばならぬ。/さようなら力道山、大鵬、長嶋、王選手」▼まるで、一編の詩のようにも読めます。投書の主は、和歌山県に住む津村崇さん。71歳。力道山がテレビで活躍し、人々の心を熱くしていたのは、津村さんが10代後半のころだったはずです▼載った12日は、参院選の投票から一夜明けた日です。投書を読み、私たちの切り詰めた暮らしの行く末を考えるにつけ、選挙での日本共産党の後退に悔しさが募るのでした。それにしても、なんという日本国なのか▼地上デジタル放送への移行は、国が勝手に決めたこと。なのに、新しいテレビをすべて自己責任で買えと求める。貧困・格差がひどくなるばかりの時世に、です。10日前の本欄で報じたように、経済的な事情で地デジがみられなくなる家のテレビに無償でチューナーをとりつける支援策も、いまだ広く知らされていません▼“切り捨てごめん”の上に消費税の増税まで持ち出すようでは、「テレビを見るまえに食っていかねばならぬ」の覚悟もうなずけます。もちろん、大鵬も長嶋も王も、そんな世の中はのぞんでいないでしょう。