2010年7月29日(木)「しんぶん赤旗」

児童虐待 相談4万4210件

09年度 過去最多また更新

厚労省調査


 全国201カ所の児童相談所が2009年度中に住民などから受けた児童虐待の相談件数(速報値)が、前年度比3・6%増の4万4210件に達したことが28日、厚生労働省の調査で分かりました。1990年度の調査開始以来19年連続で過去最多を更新しました。

 同省は「児童虐待防止法で虐待を発見した人には通告義務が課せられていることや報道などで、住民の意識が高まっているためではないか」とみています。虐待の背景には貧困があると指摘されており、貧困の広がりが一つの要因であることが考えられます。

 相談件数を都道府県・都市別にみると、東京都3339件、大阪府3270件、横浜市2466件の順で多くなっています。

 08年度の同法改正で可能となった、虐待の疑われる家庭に児童相談所が強制解錠して立ち入り調査する「臨検」は1自治体1件で実施されました。その前段階の都道府県知事による親への出頭要求は18自治体で21件(延べ対象児童25人)でした。

 また、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)児童部会の専門委員会は、虐待による死亡事例の検証報告書も併せて公表。同省が把握した08年度の事例は107件128人(前年90件114人)でした。


解説

相談所の体制 弱すぎる日本

 児童虐待相談件数が過去最多を更新しました。相談件数は、この10年間で約4倍に増加しています。しかし児童相談所の体制は、急増する相談にまったく追いついていません。

 児童相談所で、虐待などの相談を直接受ける児童福祉司は、2009年度で2428人。この10年間で1000人以上増員されたものの、他の先進国と比較するとあまりにも貧弱な体制です。

 日本の児童福祉司は、児童人口8200人〜1万3100人に1人の配置基準ですが、ドイツで同様の仕事をしている人は、児童人口900人に1人です。

 大阪府では、09年度の虐待対応課の児童福祉司1人あたりの対応件数は、約78件にもなっています。

 子どもの安全と権利を守るため、激増する相談に対応する児童相談所の体制強化が急務です。

 現場の児童福祉司は、虐待相談が増加している原因に、貧困の拡大もあると言います。児童相談所の体制強化とともに、根本的な解決を図る取り組みも求められます。(前野哲朗)





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