2010年7月28日(水)「しんぶん赤旗」
潜水艦売りつけ わいろ疑惑
独軍需企業が食い物
金融危機のギリシャ・ポルトガル
金融危機が深刻化するギリシャとポルトガルで、ドイツの軍需企業がわいろを使い、巨額の潜水艦の購入をさせていた疑惑が深まり、3国の検察当局が捜査を開始しています。(片岡正明)
米欧各紙の報道によると、疑惑をもたれているのは、独ティッセンクルップ社系列のHDW社が製造した214型ディーゼル潜水艦の購入です。ギリシャ経済が破たん寸前の今年3月に発表されたもので、購入代金として同国は同社に10億ユーロ(約1100億円)以上を支払うことになっています。
この取引に、数百万ユーロのわいろがギリシャ政府関係者に支払われたとの疑惑がもたれています。わいろを支払ったとされるのは、産業向けプラント建設を専門とするドイツのフェロシュタール社。同社はこれまでもインドネシアやアフリカ諸国などでわいろを使ってきたことで知られ、今回の取引で、フィクサー役を担っていたとみられています。
報道によるとHDW社は代金の5%を“手数料”としてフェロシュタール社に支払っていたといいます。
人口1100万人にもかかわらずギリシャは欧州最大の武器輸入国で、軍事予算の対国内総生産(GDP)比率2・8%(2008年)は欧州連合(EU)でトップ。緊縮財政で国民に負担を押し付けながら、汚職がらみで軍事費が膨張したことに、国民の怒りは収まりません。
ギリシャはフランスからもフリゲート艦6隻、救難用ヘリ15機を、米国からはF16戦闘機を十数機購入。ギリシャの警察当局は、過去10年間の武器取引に過大な支払いがなかったかどうか調査を始めました。
同様の疑惑が、ポルトガルとHDW社の2004年の取引にも指摘されています。やはりフェロシュタール社がとりまとめた取引で、ポルトガルは214型潜水艦2隻を12億ユーロで購入。しかし、これは本来の代金に3400万ユーロが上乗せされた額だったといわれます。
契約成立時に同国の首相だったのは、バローゾ欧州委員会委員長。当時の国防相が取調べを受けていますが、バローゾ氏は疑惑を否定しています。