2010年7月25日(日)「しんぶん赤旗」
ASEAN地域フォーラム
南シナ海領有権 平和解決へ
「行動規範」策定を支持
23日にハノイで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)は、南沙(英語名=スプラトリー)諸島、西沙(同パラセル)諸島の領有権をめぐって争いがある南シナ海問題を主要議題の一つとして議論しました。参加各国は、南シナ海の平和と安全が重要だとの認識で一致。「南シナ海行動宣言」を効果的に実施し、「南シナ海行動規範」へと発展させることへの支持を確認しました。(ハノイ=井上歩)
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27カ国・機構の外相が参加するARFは、アジア・太平洋地域の安全保障について話し合う唯一の枠組み。南シナ海の領有権問題が多国間の枠組みで大きく取り上げられたことは近年なく、平和解決を約束した2002年の「行動宣言」から法的拘束力ある「行動規範」への進展が、さらに注目を集めていきそうです。
「ASEANの貿易と輸送は、南シナ海が安全で開放されていることにかかっている」(スリンASEAN事務局長)。ASEAN諸国は今回のARFで、「南シナ海の平和は重要」だと強調する発言を続けました。
スリン氏は22日、「われわれは行動規範へと前進することに努力している。年末までに条文上の前進をしたい」と表明。ARFに先立ち開かれたASEAN外相会議では、今後促進させる地域の安全保障メカニズムの4本柱の1つに南シナ海行動宣言を盛り込み、位置付けを高めました。
中国と対話推進
中国の楊潔篪外相はARFで、南シナ海の問題は「二国間の問題」だと主張。こうした発言から、中国は問題の「国際化」に消極的だとされています。しかし、ASEANは、シーレーンの安全確保は中国を含む「すべての権利主張国が望んでいる」(スリン氏)と述べ、中国との対話を推進しました。
議長国ベトナムは近年、中国との間で領有権を主張しあう場面が多くみられます。漁船の安全確保への関心も高めており、年初から南シナ海問題の解決を推進していく姿勢を示していました。ファム・ザー・キエム外相は23日、海難事故・人道援助協力についての声明をベトナムが提案し、ASEAN各国の支持を得たことを会議の成果にあげました。
今月末にも海洋フォーラム
今回、日本や米国なども南シナ海問題に高い関心を示しました。
クリントン米国務長官は23日の記者会見で、「米国はアジアでの航行の自由に国益を有し、広く国際社会と共有している」と述べ、「全当事国の協同的、外交的進展を支持し、実力行使や脅迫に反対する。南シナ海の領有権争いでは、どの国にも肩入れしない」と表明しました。
日本の岡田克也外相も南シナ海問題を「地域の問題としてとらえ、ARFの場などで建設的な議論をしていくことが大事」だと表明しました。
ASEANと中国は、4月に行動宣言の実施に関する合同作業部会を開催。次回の作業部会を年内に北京で開くことを予定しています。7月末にはインドネシアで第1回ASEAN海洋フォーラムも予定されています。
南シナ海の南沙諸島をめぐっては、ベトナム、中国、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾が領有権を主張。西沙諸島については、ベトナム、中国、台湾が領有権を主張しています。