2010年7月24日(土)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「ヌートリア」をみたことありますか? 沼や池、川の岸辺にすむネズミの仲間です。大きい。頭からしっぽの先まで、1メートルもあるそうです▼原産地は南アメリカ。日本にやってきたのは、1930年代末の日中戦争のころらしい。飼育用でした。毛皮を軍隊の防寒服に使おう、というわけです。太平洋戦争の末期には、数万頭が飼われていました▼軍人は、「沼狸(しょうり)」と名づけました。「勝利」の語呂合わせです。やがて戦争が終わり、用済みのヌートリアの多くが野に放たれました。野生化した彼らはいま、「侵略的外来種」とよばれます。在来の生き物を絶滅に追いやる。人が育てた稲や麦、野菜を食べる…▼ヌートリアはほんの一例ですが、鳥獣被害は日増しに深刻です。『議会と自治体』8月号が特集しています。シカやイノシシに「2年連続して黒豆をやられ、今年は(栽培を)やめた」「伸びかけた稲をすべて食べられた」(京都)。アライグマが二条城や平等院の文化財を傷つけた(同)▼四国山地では、あちこちでシカが尾根伝いにササを食いつくし、ササ原を消滅させています。農林業を衰退させ、山々をはげ山に変えて保水力を奪い、災害の危険を大きくする鳥獣被害。放っておけば、地域社会が崩壊します▼特集は、大分県中津市で住民がボランティアで工事に加わり「住民参加型」の防護柵をつくった経験も紹介しています。しかし政府は、本年度の対策予算を大幅に削りました。「自治体が責任をもて」と。事業仕分けです。