2010年7月24日(土)「しんぶん赤旗」
主張
消費税増税と財界
国民の審判踏みにじる横暴
参院選挙で菅直人・民主党政権が持ち出してきた消費税増税に国民の審判が下されたにもかかわらず、論議の活発化を督促する財界団体の動きが目立ちます。
日本経団連と経済同友会は先週から夏季フォーラムやセミナーを開いていますが、そこでも議論の焦点になっているのは法人税減税など「成長戦略」の実行とともに、消費税増税を含む「税制抜本改革」の要求です。財界・大企業の要求をむき出しにしたもので、参院選挙での国民の審判にもかかわらずそれを押し通そうというのは、横暴そのものです。
チャンスと見たのか
日本経団連が22、23両日の夏季フォーラムを前に発表した「『新成長戦略』の早期実行を求める」という提言は、「民主導の持続的な経済成長の実現」の名のもとに、法人税負担の軽減や労働市場の流動性の拡大、温室ガス削減目標の緩和など、財界・大企業の身勝手な要求を並べ立てたものです。このなかで日本経団連が要求する法人税の税率引き下げや消費税の増税をおこなえば、GDP(国内総生産)が拡大するなどと勝手な試算まで明らかにしています。
日本経団連はフォーラム終了後発表した「アピール2010」でも、その方向を盛り込みました。
経済同友会は先週夏季セミナーを開きましたが、採択された「軽井沢アピール」は、参院選挙の結果生まれた「ねじれ」国会のもとでも国政を停滞させないことを強く要求しています。「規制改革」の推進や法人税負担の引き下げ、消費税増税(直間比率の見直し)を含む「歳出・歳入一体改革」の断行などを迫っています。
財界団体が参院選後も消費税増税の実行を求め続けるのは、参院選の結果は消費税増税に「ノー」を突きつけたものではなく、「議論を進めるための足がかりは築けた」(米倉弘昌日本経団連会長)という勝手な理屈からです。国民の審判をゆがめる暴論です。
参院選の結果、消費税の増税を持ち出した民主党が大敗しただけでなく、消費税増税を主張した自民党も比例代表の得票を大幅に減らしました。マスメディアの世論調査でも、消費税増税の議論が高まるとともに内閣支持率が低下し、消費税増税「反対」が「賛成」を上回り、選挙直後の「朝日」の調査ではついに「反対」が54%に達しています。「二大政党」が一致して持ち出した消費税増税を許さなかった国民の審判は明白です。
財界・大企業が参院選での国民の審判をごまかしてまでその実行を求めるのは、消費税増税とセットにした大企業減税が年来の主張であり、民主党と自民党が足並みをそろえ始めたいまこそ、その実現のチャンスだと見ているからです。国民の審判がどうあれ要求さえ押し通せればいいというのは身勝手もはなはだしい態度です。
断念に追い込むまで
そうした要求を押し通すため、参院選後財界の主張は、菅首相が「長期間、国の運営をリードしていける政権の構築」(桜井正光経済同友会代表幹事)をと、「政権の安定」を求めているのも特徴です。
財界とアメリカに忠誠を誓う菅政権のもとで、消費税増税などが強行される危険は重大です。参院選での審判に続き、財界に断念させるまで、消費税増税反対の世論を広げていくことが重要です。