2010年7月23日(金)「しんぶん赤旗」

主張

「思いやり予算」

全廃してこそ基地もなくせる


 在日米軍駐留経費の日本側負担(いわゆる「思いやり予算」)についての日米交渉が始まりました。「思いやり予算」の根拠の一つとされる米軍地位協定24条の特別協定が来年3月末で期限が切れるため、継続のあり方を協議します。

 アメリカは膨大な財政赤字を抱え軍事費の圧縮を余儀なくされており、日本に「思いやり予算」や米軍再編経費の増額を強く迫るのは必至です。アメリカの身勝手な押し付けを許さず、「思いやり予算」の全廃に踏み出し、軍事費を福祉・暮らしにまわせという国民の願いに応えるかどうか、菅直人政権の態度が問われます。

道理のない異常な負担

 日本政府は「思いやり予算」の「減額」すら正面にすえておらず、日本負担の「効率化を図りたい」(岡田克也外相)というだけです。これでは世界的にみても異常な「思いやり予算」の全廃どころか、大幅に削減することさえできるはずがありません。

 もともと「思いやり予算」は、米軍地位協定で日本側が負担する義務を負っていないのに、アメリカの財政悪化を理由に1978年に日本政府が始めたものです。当初62億円だった「思いやり予算」の負担額が、今年度は1880億円にまで膨らんでいます。米軍機保護用のシェルター建設や“殴り込み”作戦用の上陸用舟艇(LCAC)など米軍の作戦機能を丸ごと日本側が負担するのは、日本以外のアメリカの同盟国には見られない“異常”です。

 「思いやり予算」を続ける理由はどこにもありません。民主党政権発足直後の代表質問で、日本共産党の志位和夫委員長が「『思いやり予算』に切り込む意思はあるのか」と質問し、当時の鳩山由紀夫首相も「包括的な見直しが必要だ」と答弁せざるをえませんでした。しかし政府はその約束をほごにし、「思いやり予算」そのものを、予算を見直す事業仕分けの対象にもしませんでした。不当な「思いやり予算」に固執する政府に批判が強まっているのは当然です。

 在日米軍のための日本側の負担は、「思いやり予算」のほか、96年のSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意による「SACO経費」、2007年度から始まった米軍再編経費など、今年度合わせて3369億円という巨額にのぼっています。

 しかもアメリカはこれで満足とはしていません。現にゲーツ米国防長官は、米領グアムの米軍基地建設経費の日本側負担を増やすよう日本に迫っています。日本側の負担額はグアム移転協定で約61億ドルと決まっているのに追加負担せよというのです。「日米軍事同盟絶対」の呪縛(じゅばく)にしばられている菅政権の足元をみての不当な要求であり、「思いやり予算」をはじめ根拠のない日本側負担は、根本的に見直し全廃をめざすべきです。

アメリカいいなり正せ

 「在日米軍の費用の70%を日本が負担しているのだから、米国内におくよりも日本に駐留させる方が安上がりだ」というのがアメリカ政府の勝手な言い分です。アメリカいいなりに米軍経費を負担し続けるのでは基地はなくせないのは明らかです。

 米軍基地を縮小・撤去する道を開くためにも、「思いやり予算」などの米軍経費の日本側負担を全廃することが重要です。





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