2010年7月22日(木)「しんぶん赤旗」
30分審議で福祉銭湯「不要」
神奈川・鎌倉市にみる
自治体版 危ない事業仕分け
民主党政権下で行われている事業の存廃を公開の場で決める「事業仕分け」が地方自治体でも行われています。2002年から政策集団・構想日本によって49自治体で事業仕分けが行われ、健康・福祉など多くの身近なサービスが削られてきました。今月10日、神奈川県鎌倉市で行われた事業仕分けを見てみました。(柴田善太)
鎌倉市は構想日本に事業仕分けを委託(委託料約150万円)、構想日本のメンバー4人、市民2人の6人の班を三つ作り、30事業33項目を「不要」「民間(でやるべき)」「国・県・広域(でやるべき)」「要改善」「現状どおり」の5ランクに仕分けしました。その結果、「不要」11項目、「要改善」19項目と、この2ランクが大半を占めました。
高齢者の公衆浴場料を助成する事業、公衆浴場で健康チェックを行う事業が「目的があいまい」「利用者が少ない」と「不要」とされました。このほか、75歳以上の人に交通機関の利用料年2000円を助成する事業、小学校に施設管理員を配置し校内の巡回や点検を行う事業なども「不要」とされました。
市はこの結果に基づき「来年度予算を編成するとともに、今年度の事業見直しも行いたい」(担当課)としています。
高齢者福祉充実の運動に携わってきた女性(88)は「銭湯は高齢者の社交場、みんなでしゃべって元気になる。交通費の補助もお年寄りが家にこもりきりにならないように運動して勝ち取った成果で、本当は補助を増やすべきものです。国のまねして削減じゃダメですよ」と言います。
利用者らでつくる「銭湯友の会」は15日、1万2409人分の署名を松尾崇市長に手渡し事業存続を申し入れました。ある公衆浴場経営者は「官僚の天下り組織なんかは事業仕分けすればいいけど、福祉や身近なサービスは仕分けにはなじまない」と批判しました。
日本共産党の高野洋一市議は「現在の事業は『市民100人会議』を作るなど市民参加で練り上げられてきました。それが市民でない『構想日本』メンバー主導により、1事業30分という審議で『不要』とされ、廃止されることになれば地方自治の根幹が崩れます」と話しています。
構想日本 元大蔵官僚の加藤秀樹氏(現・政府の行政刷新会議事務局長)らが1997年に設立した民間の政策シンクタンク。これまで、省庁再編を実行した自民党の橋本「行革」や「官から民へ」の小泉「改革」路線を応援してきました。
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