2010年7月22日(木)「しんぶん赤旗」
人種平等法が成立
ブラジル 黒人差別解消へ前進
【メキシコ市=菅原啓】南米ブラジルで20日、黒人差別を是正するための「人種間平等法」が成立しました。ルラ大統領は同法の署名式典で、「ブラジルはこの法律によってより公正な国になるだろう」と語りました。
ブラジルでは、ポルトガルの植民地だった16世紀後半から独立後の19世紀後半まで、奴隷として多数の黒人がアフリカ大陸から連れてこられました。現在、黒人や黒人系の混血の国民は人口の半数近くに達していますが、社会の中でさまざまな差別や不利益をこうむっています。
人種間平等法は、人種差別的な言動を懲役刑にすることや、アフリカやブラジルの黒人の歴史についての教育を義務付けることなどを規定。警察官による黒人への差別的な扱い、暴力が横行するもとで、こうした人権侵害が起きないようにする措置や、そうした措置の実行状況を監視する公的機関の設立なども盛り込んでいます。
下院を通過した法案には、大学入学にあたっての黒人特別優先枠の設置、最低20%の雇用を黒人系とするよう企業に促す助成制度の創設が盛り込まれていましたが、上院での審議の過程で削除。黒人団体の間からは、強い不満と批判の声も上がっています。
ルラ氏はそのような意見を持つ人々に対し、「みなさんは敗北したのではなく、多くのことを勝ちとったのだ」と指摘。「われわれがしなければならないのは、完全な人種間平等の保障に向けて足りないところを強化していくことだ」と述べました。