2010年7月22日(木)「しんぶん赤旗」

主張

カブール国際会議

「アフガン化」でなく和平を


 アフガニスタンの首都カブールで、クリントン米国務長官や岡田克也外相ら約70カ国の代表が参加した国際会議が開かれました。カルザイ・アフガン政権への支援継続とともに、駐留外国軍がもつ治安権限を2014年末までにアフガン側に移すことでも合意しました。しかし、肝心の和平への道筋が示されないままでは、治安権限の移譲も戦争の「アフガン化」につながりかねません。

米戦略に強まる疑問

 オバマ米政権は反政府勢力タリバンを力ずくで押さえ込もうとして、米軍を次々に増派してきました。駐留外国軍は全体で15万人、米軍は10万人に上ります。それにもかかわらず、タリバンの攻勢で、先月は外国軍の1カ月間の死者数が開戦以来初めて100人を超えるなど、治安は逆に悪化しています。戦闘に巻き込まれるなどで、民間人の犠牲も続いています。

 開戦から9年、アフガンでの戦争は米国にとってすでに“最長の戦争”です。軍を派遣しているヨーロッパ諸国などでは、国民の間に撤退を求める声がますます強まっています。

 戦争を主導する米国でも今後の見通しに不安が高まっています。与党・民主党の実力者であるケリー上院外交委員長も14日の公聴会で、「多くの国民が、正しい戦略をもっているのかどうか疑問をもっている」と述べました。オバマ政権は11月に中間選挙を控え、戦争からの「出口戦略」で成果を出す必要に迫られています。

 米政権はアフガン治安部隊を強化し、来夏にはアフガンからの撤退を開始すると表明しています。米内外の疑問は、その計画でアフガンの和平と安定が達成できるのかに向けられています。

 「米国を含め、ここに参加している多くの国々の国民には、(計画の)成功が可能なのか、すべての国が努力しているのか、という疑問がある」―カブールでの会議でクリントン長官は困難を認めながら、「疑問には行動で答える」というのが精いっぱいでした。

 交渉によって和平を達成しようとする方針が、米国にないことこそが最大の問題です。タリバンとの交渉なくして和平は達成できないとする考えは、カルザイ大統領だけでなく、国際機関や各国政府、軍関係者にも広がっています。

 しかし、オバマ政権は軍事作戦によってタリバンを弱体化させることに固執しています。タリバンの最大の拠点であるカンダハルへの攻撃も準備しています。

 外国軍の増派で治安が改善するどころか、駐留軍兵士らがアフガン治安部隊員に射殺される事件さえ立て続けに起き、派兵国に衝撃を与えています。タリバンの治安部隊への浸透によって、アフガンへの治安権限の移譲計画自体が破たんしかねない状況です。

軍事では解決しない

 軍事力でアフガン問題を「解決」することはできません。米国は「アフガン化」の道を探るのではなく、和平への道筋をこそ探るべきです。そのためには外国軍の撤退が不可欠です。

 日本政府はタリバン投降兵の社会復帰を支援する計画です。その計画も外国軍撤退と和平の道に位置づけられてこそ貢献となります。アフガン国民への支援とともに、米国に和平戦略を求める必要がますます大きくなっています。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp