2010年7月20日(火)「しんぶん赤旗」

大学予算削減 関係者ら反対相次ぐ

国の知的基盤を破壊し、国家の危機を招来する


 政府は20日にも2011年度の概算要求基準(シーリング)の大枠となる骨子を策定しようとしています。政府はすでに「中期財政フレーム」を閣議決定しており、そこでは国債を除く歳出を前年度以下に抑える方針を示しています。

 これに対し、大学などが大学予算削減反対の声明を相次いで発表。削減額が東北地区の7国立大学の運営費交付金全額に匹敵する(16日の東北地区国立大学学長連名の共同声明)など、教育研究活動に破壊的な打撃を与えると危機感を表明し、知事など地方自治体に要望する学長もいます。

 うち14日発表の国立大学協会と日本私立大学団体連合会の連名の声明を紹介します。


国大協と私大連共同声明

 「国立大学法人運営費交付金」及び「私立大学等経常費補助」は、平成23年度(2011年度)概算要求枠での削減対象から除外すること!!

 大学予算の一律削減は、人材養成・学術研究の中心として、成長の原動力をなす我が国の知的基盤(大学)を破壊し、国家の危機を招来する!!

 菅内閣の下で策定された「財政運営戦略」と「新成長戦略」が目指す「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」は、わが国が置かれている経済・財政の危機的状況に照らし、当然実現されるべきものです。同時に、「新成長戦略」は、「強い人材」の育成が、成長の原動力として未来への投資であることを踏まえ、教育力や研究開発力を世界最高水準にするための効果的な公的投資を拡充する旨、明記しています。

 現在の厳しい財政状況について、大学関係においても認識しているところです。大学は、これまで人件費削減をはじめ、ぎりぎりの努力をしておりますが、これ以上の削減は限界であります。

 大学は、「持続可能な成長を担う若年層や知的創造性(知恵)(ソフトパワー)の育成」(「新成長戦略」より)の欠くべからざる土台であり、わが国全体にかかわる新しい未来を切りひらく存在でなければなりません。「強い大学」の実現を目指し、大学の教育研究環境の整備や学生への経済的支援の充実を図ることが、日本の輝かしい未来を切りひらくものと確信します。

 一方、「財政運営戦略」(6月22日閣議決定)の「中期財政フレーム」によれば、平成23年度からの3年間は「基礎的財政収支対象経費」について前年度を上回らないこととし、できる限り抑制に努めることとされています。これを受けて、仮に、こう間1兆円以上とも言われる社会保障関係経費の伸びを勘案すれば、いわゆる「政策的経費」は年率8%の減となります。教員等の人件費を含む大学運営の基盤的経費である国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助もその対象とされれば、削減額は、単年度だけでも1185億円(国立927億円、私立258億円)という、すさまじい削減を求められることが予想されます。

 わが国の高等教育への公財政支出は既にOECD(経済協力開発機構)諸国の最下位という状況です。その上、このようなさらなる過酷な削減を行うことは、わが国の成長の原動力である大学の存立を危うくするものであり、天然資源に乏しく、科学・技術と人材に頼るしかないわが国においては、まさに国の将来を危うくする致命的な施策となります。

 ついては、平成23年度概算要求枠において、「国立大学法人運営費交付金」および「私立大学等経常費補助」については、削減の対象外とし、「新成長戦略」に基づき、長期的な観点から予算配分が行われることや、高等教育への公的資金の投入について国民の皆様のご理解ご支援をいただき、来年度概算要求にあたっても高等教育予算確保について強く要望します。





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