2010年7月20日(火)「しんぶん赤旗」
アフガン撤退世論 61% 増派 7%
オーストラリア 戦死者増加
アフガニスタンに派兵されているオーストラリア軍の死傷者が増加、6月末にスタートしたばかりのギラード労働党政権は撤退を求める世論の強まりに直面しています。(田中一郎)
「アフガンでまた1人の兵士を失った。悲劇の日だ」。ギラード首相は10日、オーストラリア北部の都市ダーウィンでこう語りました。首相の同地訪問は、6月21日にアフガンでのヘリ墜落事故で死亡した兵士3人のうち1人の葬儀に出席するためでした。
ところが、葬儀前日の7月9日に路肩爆弾でオーストラリア軍兵士1人が死亡。同国軍兵士のアフガンでの死者数は合計17人になりました。葬儀訪問先で新たな戦死者にコメントせざるをえない事態は、戦況の深刻さを印象づけました。
当初から派兵国
オーストラリアは、2001年に米国がアフガン戦争を始めたときから派兵を続けています。この間、07年に保守連立から労働党への政権交代がありましたが駐留は継続。09年には派兵規模は1100人から1550人に拡大されました。
オーストラリア軍撤退を求める世論が強まるきっかけになったのは、6月7日に簡易爆発装置(IED)による攻撃で同軍兵士2人の死亡です。同国にとって一度に複数の戦死者が出たのは「ベトナム戦争以来初めて」(AAP通信)でした。
3月の世論調査で50%だった撤退賛成は、6月21日発表の調査では61%に達しました。一方、増派賛成は7%のみ。しかもこの世論調査の発表の日にヘリ墜落事故が発生しました。AAP通信は「政府は撤退を求めるさらなる圧力に直面することになる」と報道しました。
この直後に支持率の低下で辞任したラッド氏に代わり、首相に就任したのがギラード氏でした。
ギラード氏は、オバマ米大統領との電話会談で、世論の要求に背を向けてアフガン駐留継続の方針を伝達。さらに、オーストラリア兵17人目の戦死者を受け、7月12日付の国内各紙に論文を寄稿し、「オーストラリア軍の死傷者は増えるかもしれない」と認めました。
テロ誘発の指摘
ABC放送(電子版、15日)でオーストラリア国立大学(ANU)戦略防衛研究センターのクリーブ・ウィリアムズ客員研究員は「派兵反対ではない」とことわりながらも「国民は、なぜ若者が外国の地で命を失っているのか説明を受ける権利がある」と指摘。国内のイスラム教徒の若者がアフガン戦争をイスラム教敵視とみなしテロ攻撃に走る危険があるとし、「アフガン派兵は、テロを防ぐより国内でのテロを導きかねない」と警告しました。
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