2010年7月20日(火)「しんぶん赤旗」
主張
ジブチでの基地建設
派兵強めるしか策がないのか
政府は、「海賊対処法」にもとづくアフリカ北東部のソマリア沖での自衛隊の活動期間を、1年延長することを決めました。一方で、そのための自前の基地を隣国のジブチに40億円かけて建設中です。来年3月までに完成予定です。
ジブチでの基地建設は自公政権が昨年固めたものを、民主党政権が参院選挙のマニフェストで「海賊対処活動の継続」をかかげ、具体化するものです。自衛隊の「海賊対処」活動の長期化と日本の軍事的役割の誇示が狙いです。
自衛隊特権の押し付け
現在「海賊対処」として派遣されている海自のP3C対潜哨戒機の駐機場はジブチの空港管理会社からの借用、陸・海自衛隊員の宿舎は米軍宿舎を使うなど、自衛隊は間借り状態で活動を続けています。政府はジブチ空港の隣接地に、自前の駐機場や格納庫、宿舎などをつくり、それを足場に活動を本格化させようとしています。
ソマリア沖への自衛隊派遣は、現地で相次いでいる海賊への「対処」を口実に、政府が昨年強行したものです。本来、「海賊対処」であっても自衛隊の海外派兵は憲法上許されません。自衛隊は「わが国を防衛するための必要最小限の実力組織」だという政府見解に照らしても明らかです。
ソマリア沖で海賊が出没しているのは、ソマリアが政府のない状態で、経済活動もまともにおこなえないからです。必要なのはソマリアを政治的・経済的に復興させ、海賊を生業にしなくてもいい国づくりを支援することです。そのために日本がやるべきことはたくさんあります。日本に求められるソマリア復興支援に全力をあげずに、軍事対応を強めジブチに自前の基地までつくるのは本末転倒そのものです。
日本やアメリカなど主要国が多数の軍艦や航空機を投入しても海賊行為をなくせないどころか、海賊被害は広がるばかりです。軍事対応で海賊問題を解決するのは限界があることを示しています。しかも今回の日本の基地建設がアメリカの軍事戦略にそったものだということは見過ごせません。
アーミテージ米元国務副長官らの日米同盟に関する第2次報告書(2007年)は、日本が「海賊対策の問題で重要な能力」をもっているとし「指導的役割」を求めました。ことし2月発表のアメリカの「4年ごとの国防計画見直し」(QDR)も、「海賊」から「海上交通路を防衛」するために各国に協力を求めています。
昨年政府筋は「活動本格化に向け米軍からも独自施設を求められた」とのべています。こうしたなかでの基地建設は、アメリカいいなりの海外派兵態勢の強化ととられても仕方がありません。
復興支援こそ真の役割
ジブチへの派兵に伴い日本政府が昨年ジブチ政府と結んだ地位協定も問題です。基地の保護のために自衛隊が「必要な措置」をとることや刑事裁判権を日本が「すべての要員について行使する」ことを明記するなど、事実上の“治外法権”を押し付けています。
日本が海外での軍事態勢を強めていることに、諸外国が警戒心を高めるのは必至です。政府はジブチでの基地建設をやめるとともに自衛隊を撤退させ、日本が力を発揮できる復興支援などによって海賊問題の解決に尽力すべきです。