2010年7月20日(火)「しんぶん赤旗」
米原潜寄港 今年すでに30回
異常な高水準
米海軍原子力潜水艦の日本寄港が今年に入り30回に上っていることが、寄港地を抱える各自治体の集計で分かりました(7月16日現在)。1年間の寄港回数が過去最多(64回)だった1997年の同時期(31回)に匹敵する異常水準となっています。
米太平洋艦隊潜水艦部隊司令部によると、日本に寄港している米原潜の任務は、▽巡航ミサイル・トマホークによる攻撃▽対潜水艦戦▽水上艦の追跡▽偵察・情報収集▽特殊作戦部隊の投入―などとされています。日本は、アジア太平洋地域の米軍事戦略に基づく米原潜の一大活動拠点になっています。
核持ち込み
重大なのは、米原潜による核兵器持ち込みの問題です。
今年3月、核密約など日米密約に関する外務省「有識者委員会」の報告書(注)が発表されました。同省は、米原潜の寄港地を抱える自治体に報告書の内容を説明。横須賀市によると、同省はこれまで「米側から事前協議がなかったから核を搭載した艦船の寄港はなかった」と説明してきたが、「なかったとは言い切れない」と説明を変え、核兵器が持ち込まれていた可能性を認めました。
一方で同省は、▽米政府が91年に水上艦と攻撃型潜水艦などから戦術核兵器を撤去すると発表した▽今年4月の核態勢見直し(NPR)で攻撃型原潜に搭載する核弾頭付きトマホークを退役させる方針を明らかにした―ことなどを指摘。現時点では、核搭載艦船の日本寄港はないと断じました。
しかし、米政府は94年のNPRで攻撃型潜水艦については核巡航ミサイルの配備能力を維持することを決定。一部のロサンゼルス級攻撃型原潜にいつでも核トマホークを搭載し核攻撃ができるよう態勢をとっています。
今年4月のNPRでいわれた核トマホークの退役も即刻行われるものではありません。退役完了には「今後2年から3年かかる」(米国防総省幹部)とされ、その間は核持ち込みの危険は現実に続きます。
しかも、外務省は「有識者委員会」の報告書を受け「米国との取り決めを変えることはない」と説明。核搭載米艦船・航空機の事前協議なしの寄港・飛来を認めた核密約(「討論記録」)を廃棄する考えはないことを明らかにしています。
核密約が廃棄されなければ、日本への核持ち込み態勢は米国の核戦略いかんでいつでも継続・復活することができます。
事故の危険
原子力事故の危険もあります。
08年に放射性物質を含んだ冷却水が漏れ出る事故が明らかになった原潜ヒューストンは安全対策などに関する十分な説明もなく今年も寄港を強行しました。7月13日に佐世保に寄港した原潜ツーソンは修理作業を行っていることが確認されています。(榎本好孝、遠藤誠二)
(注)核搭載米艦船・航空機が事前協議なしに自由に日本に立ち入ることを日米が合意した「討論記録」(60年1月6日)の存在を認めながら、これを核持ち込み密約であることを否定。この立場を正当化するため、米国は「討論記録」を核持ち込みの根拠にしたが、日本側はそう解釈していなかったなどという歴史の事実をゆがめた議論を展開しています。
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