2010年7月19日(月)「しんぶん赤旗」
政府が創設狙う「こども園」
親の経済力で保育に格差
公定より高い利用料も
政府は、幼稚園と保育所を一体化して2013年度に創設することを狙う「こども園」(仮称)の利用料の設定について、18日までに検討に入りました。基本的に市町村が定める公定価格としつつ、施設ごとの特性などを勘案した上で、それより高い利用料の設定も認める方向です。
民主党政権は6月に「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」を決定。幼稚園と保育所を廃止して「こども園」に一本化し、営利企業を積極的に参入させる方向を打ち出しました。利用者は市町村に入所を申し込むのではなく、事業所と直接契約することになります。
現行制度では、保護者の仕事や疾病などで「保育に欠ける」状態の子どもについては、市町村が保育所に入所させて保育を保障する責任を負っています。事業所との直接契約は、この公的責任を解体し、親の自己責任に変えるものです。
現在、保育所の利用料は社会保障として所得に応じた「応能負担」になっており、国の基準額表を基礎に市町村が設定しています。公立幼稚園の利用料も市町村が定めていますが、利用料設定が自由な私立幼稚園では大きな格差が生じています。私大付属幼稚園では初年度納付金の合計額が100万円を超す例もあります。
既存の私立幼稚園の利用料は多様なため、保育所と一体化した「こども園」の利用料を統一することはきわめて困難です。公定価格より高い利用料の設定も可能とすれば、結局施設ごとにばらばらになることは目に見えています。
「こども園」の利用料は、受けたサービスへの支払いという「応益負担」になります。利用時間に応じた保育料の何割かを市町村が事業者に給付し、残りが利用者の自己負担になる見込みです。保育を長時間必要とするほど負担が重くなり、低所得世帯が必要な保育を受けにくくなる危険があります。
その上、施設ごとに利用料設定がばらばらとなれば、親の経済力によって保育の質が左右されかねません。公定価格しか払えない場合に受けられる保育は、「松・竹・梅」の「梅」で、「もっとよい保育を望むなら追加料金が必要」という事態が広がる恐れがあります。
社会保障としての公的保育を解体し、お金がなければ買えない商品に変質させるものです。(杉本恒如)