2010年7月16日(金)「しんぶん赤旗」
主張
宜野湾市「提訴」
基地への怒り国は受けとめよ
米軍普天間基地の無条件撤去がもはや引き返せない沖縄県民の総意となるなかで、地元宜野湾市の伊波洋一市長が国を相手取り、普天間基地提供の違憲・違法を問う裁判を起こす意向をあきらかにしたことが注目を集めています。
実際に提訴するかどうかは市議会などとの調整によりますが、普天間基地問題に一石を投じたのはまちがいありません。政府は、普天間基地問題の打開を願う地元の切実な思いを受けとめ、県内「移設」と基地負担の押し付け策動をやめるべきです。
受忍限度超える痛み
伊波市長が違憲訴訟の意向を示したのは、宜野湾市の委託を受けて弁護団・専門家が提出した提言にもとづくものです。提言は宜野湾市の自治権の侵害、自治体の平等原則違反、受忍限度を超える危険性などを指摘しています。
宜野湾市のど真ん中を占拠する普天間基地は米国防長官でさえ「世界一危険」という米海兵隊の海外出撃基地です。大型輸送ヘリなどがイラクやアフガニスタンへの出撃をくりかえしているように日本のための「抑止力」ではなく、まさに「侵略力」そのものです。
市民にとってとりわけ重大なのは、米軍機による危険性が放置されていることです。ヘリをはじめ米軍機はわが物顔に市民の頭上を低空で飛び回り、昼間だけでなく深夜から早朝にかけても耐え難い爆音被害を押し付けています。普天間第二小学校では授業をしばしば中断することを余儀なくされています。2004年には訓練中の大型輸送ヘリが、マンションが立ち並ぶ地域にある沖縄国際大学の構内に墜落しました。人的被害はなかったものの、一歩間違えば大惨事となっていました。
宜野湾市民の苦痛は甚大であり、受忍限度をはるかに超えています。「すべて国民は、法の下に平等」とうたった憲法14条に違反しているのは明らかです。政府が普天間基地の危険をこれ以上放置し続けるのは絶対に許されません。
伊波市長が問題にしているように、普天間基地は宜野湾市の負担を増大させ、自治権も侵害しています。例えば基地が市のど真ん中にあるため消防署を3カ所に分散させて置かざるを得ません。カネも人も余計に必要です。米軍地位協定が米軍の基地管理権を認めているため、普天間基地から生じる騒音を規制する条例も制定できません。基地内に立ち入ることができず、埋蔵文化財の調査さえもできない状況です。
一刻も早く、普天間基地の被害をなくし、基地の閉鎖・撤去を実現することが重要です。
無条件撤去しかない
宜野湾市民だけでなく沖縄県民は普天間基地の無条件撤去を願っています。地元紙が実施した世論調査で、名護市辺野古への「移設」反対は84%、「無条件撤去」は38%を占めた結果でもあきらかです。
菅直人首相は、県民の総意を無視し、普天間基地の名護市辺野古「移設」を明記した日米合意を実行すると言い続けています。これに対して沖縄県議会は9日、日米合意の「見直し」を要求する日本政府あての意見書と米政府・議会あての決議を全会一致で可決しました。これこそ県民の総意です。
県内「移設」をやめ、普天間基地の無条件撤去の声にこたえることこそ政府の責務です。