2010年7月16日(金)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
街なかの雑木林の樹影を映す、涼しげな夏の池。朝、カメラをもつ人でにぎわいます▼お目当ては、カワセミです。るり色の美しいつばさをもつ鳥の、一挙手一投足に目をこらします。水面すれすれに滑空する姿。池にすむ小魚をすばやく捕る瞬間。埋め立てから再びよみがえった池に、開発で都市から追われていたカワセミも戻ってきました▼「渓流の宝石」とたたえられる鳥だから、川の方がお似合いかもしれません。が、復活した街の水辺もえさには不自由しないようです。ただし、ブルーギルやブラックバスが放流されていないから。外来魚がカワセミのえさを食べつくす池も、多いそうです▼最近、カワセミの意外な生態を知りました。日本野鳥の会会員で児童文学者の、国松俊英さんが書いています。巣穴は不潔きわまる、と。「ひなの糞(ふん)、吐き出した魚の骨、食べ残して腐った小魚などがたまって、なんともいえない臭気で満ち満ちている」(「アサヒタウンズ」3月25日付)▼外見とは大違い。まあ、人間にも、おしゃれだが住まいは散らかり放題の人がいるけれど。カワセミの親は、ひなの糞を巣の外に捨てません。ひなが育つと2度目の巣づくり。カワセミは、ほとんど同じ巣穴を使わないそうです。「汚くて使用する気にならないのでしょう」と、国松さん▼後は野となれ山となれ。環境壊しの乱開発に踊る人や、核ゴミの始末に困る“トイレなきマンション”の原発にあくまで頼ろうとする人は、カワセミを笑えないでしょう。