2010年7月16日(金)「しんぶん赤旗」
普天間「移設」 日米協議破たん不可避
11月「決着」に否定意見も
沖縄の米軍普天間基地(宜野湾市)の「移設」問題で日米両政府は、参院選のため一時中断していた、外務・防衛当局の専門家協議を、米ワシントンで15日(現地時間)から再開します。しかし民主党政権は参院選で沖縄に候補者を立てることさえできずに不戦敗。「県内移設」反対という県民の総意は明白であり、どんな新基地建設計画をつくっても破たんは避けられません。
専門家協議は、日米外務・防衛担当閣僚で構成する日米安保協議委員会(2プラス2)の「共同発表」(5月28日)に基づいて行われています。同発表は、普天間基地に代わる新基地を沖縄県名護市の辺野古周辺に建設することを明記。新基地の具体的位置や工法などについて専門家による検討を「いかなる場合でも8月末までに完了」させるとしました。
シナリオ描くも
専門家協議では、自公政権時代の2006年に日米が合意した、V字形の2本の滑走路を持つ新基地を辺野古沿岸部に埋め立て方式で建設する案に対し、(1)滑走路を沖合に移動させる(2)滑走路を1本にする―案などを検討。日本側は結論を一つに絞り込まず複数案にすることを米側に提案しているともされます。
専門家協議の検討が完了すれば今秋に2プラス2を開催、11月に予定されるオバマ米大統領の来日時に最終合意するというシナリオも描かれています。
しかし仙谷由人官房長官は15日の記者会見で「5月末の(日米)合意を実行していく」としつつ、「交渉事で今から日程を切るとか切らないという話ではない」と指摘。「(11月に最終合意というのは)誰が決めたのか。(オバマ大統領が)来るからという連想ゲームの世界だろう」と述べ、11月「決着」の可能性に否定的な考えを示しました。
仙谷官房長官がこう述べざるを得ないのは、「県内移設」反対という沖縄県民の意思が確固としたものだからです。
「県内」反対8割
7日発表の県民世論調査(琉球新報と共同通信の合同調査)では「県内移設」反対が79・1%に上りました(内訳は国外移設36・4%、無条件撤去28・1%、県外移設14・6%)。9日には県議会が日米「共同発表」は「県民を愚弄(ぐろう)するもの」として見直しを求める意見書・決議を全会一致で可決しました。
今回の参院選では沖縄の有力3候補が「県内移設」反対をそろって公約。民主党が不戦敗に終わったのは、地元の合意、理解を得ることは不可能だと自ら認めたのに等しいものでした。こうした状況の下、「日米合意に基づいて8月末にも(専門家協議の)結論を出すというのは無理だ」(日本政治の研究で有名なジェラルド・カーチス米コロンビア大教授、12日)という指摘も上がっています。
沖縄では今後、9月に名護市議選、11月に県知事選と重要な政治戦が相次ぎます。
自民党案だのみ
辺野古「移設」に固執する民主党政権は「自民党はもともと辺野古沖(への移設)という考え方を持っていたわけで、話し合いをきちんと行うことによって共通点を見いだしていきたい」(岡田克也外相、13日)とし、自民党との「協力」にまで言及しています。
こうした動きを許さず、普天間基地問題の解決のため無条件撤去を求める声を沖縄だけでなく全国で広げていくことが必要になっています。(榎本好孝)