2010年7月15日(木)「しんぶん赤旗」
ブレア首相は警告を無視
イラク侵攻の「根拠」英法務長官否定していた
調査委員会が機密文書公表
英軍が米軍とともに2003年3月にイラクに侵攻する以前、当時の英法務長官が侵攻の違法性を警告していたことを示す機密文書がこのほど公表されました。それによると、ブレア首相(当時)がこの警告を無視していたことが鮮明になっています。
01年から07年まで法務長官を務めたゴールドスミス氏は今年1月、イラク戦争を検証する調査委員会の公聴会で証言し、米英両国がイラク侵攻の根拠とした国連安保理決議1441によって侵攻を正当化することはできないと考えていたことを初めて公式に認めました。同氏は、侵攻直前には侵攻の合法性を発表していました。
機密文書は同委員会が、内閣府の機密解除の了解を得て公表しました。同文書によると、ゴールドスミス氏は侵攻の違法性についてブレア英首相に繰り返し文書で警告していました。
02年7月30日付の文書では、正当防衛を理由にした武力行使が許されるかどうかで「主要な問題は攻撃が切迫しているかどうかだ」として、「大量破壊兵器の開発それ自体では、そのような危急を示すのには不十分」と述べています。
03年1月14日付では、前年の11月に採択された安保理決議1441には「武力行使の明確な承認が無い」と指摘。同月30日付では、武力行使には「追加的決議が必要」と主張しました。
この1月30日の文書には「明確なアドバイス」という手書きの文字が記されています。英紙ガーディアンはこれをマニング外交担当首相補佐官(当時)によるものと伝えました。
これに対しブレア首相は、この文書の余白に「納得しない」と書き込んでいます。同首相は翌31日、ブッシュ米大統領(当時)と会談し、「あなたとともにある」と述べ、侵攻支持を表明したと伝えられています。
イラクに派兵したオランダのイラク戦争調査委員会は今年1月に発表した報告書で、決議1441は軍事力行使を認めておらず、侵攻は「国際法上の合法性を欠く」と結論づけています。(ロンドン=小玉純一)
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