2010年7月15日(木)「しんぶん赤旗」
出産育児一時金で議論
医療機関の負担軽減も
社保審部会
厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会が14日に開かれ、「出産育児一時金」の「直接支払制度」の問題点が議論されました。
出産や健診の経済的負担を軽減するために支給される「出産育児一時金」は、従来は妊婦が出産費用を医療機関に払った後で、加入する医療保険から受け取っていました。昨年10月から、まとまった出産費用を用意する妊婦の負担を取り除くため、医療保険が医療機関に直接支払う方式に変更されました。
しかし、医療機関への支払いに出産から約2カ月かかり、中小の医療機関が資金繰りに支障をきたす事態が起こっています。改善を求める声を受けて、対応が困難な医療機関は2010年度末まで実施を猶予するなどの措置がとられてきました。
議論の中では、医療側の委員から「医療崩壊」の中で分娩(ぶんべん)施設が激減している現状が示され、「妊婦の経済的負担の軽減はいいが、お産の場所がなくなっては本末転倒だ」との意見が続出。事前に申請すれば出産直後に一時金を受け取れるなどの新制度の創設を求める声が相次ぎました。一方、保険者側の委員らは、システム改修の負担などを理由に現行制度の継続を求めました。
同部会は、2年間の暫定措置として38万円から42万円に引き上げられている一時金の額についても今後議論し、11月までに結論を出す方針です。
この問題で日本共産党の小池晃政策委員長は是正を求める質問主意書を3回にわたって提出し、適用猶予を実現させました。小池氏はさらに、産科医療機関・助産所に負担を強いることのないよう抜本的見直しを求めていました。
高額療養費充実を議論
14日に開かれた厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会で、高額療養費制度の充実が議論されました。
高額療養費制度は、患者の負担を軽減するため、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が後で払い戻される制度。入院の場合には、窓口での支払いを自己負担限度額にとどめる「現物給付」となっています。透析が必要な慢性腎不全など三つの「特定疾患」の自己負担限度額は月1万円におさえられています。
同部会では、▽低所得層の自己負担限度額の引き下げ▽外来の高額療養費の「現物給付」化▽「特定疾患」の対象の拡大―などの要望を列挙。財源を勘案しつつ検討を進めることが確認されました。