2010年7月14日(水)「しんぶん赤旗」

先進主要国では当たり前

最賃1000円以上 日本もぜひ


 「最低賃金を全国一律で時給千円以上に」―。貧困打開と景気の底上げのため、最低賃金(最賃)の大幅引き上げを求める声が高まっています。

 厚労相の諮問機関である中央最低賃金審議会は、今年度の最賃の改定目安を協議中です。先進主要国のなかでもきわめて低い日本の最賃。抜本的な引き上げが求められます。


欧州は全国一律制

 欧州など先進諸国のほとんどでは、全国一律の最賃制度があり、時給で千円以上が当たり前となっています。

 変動の激しい為替レートでは千円を割る国があるものの、物価を調整した購買力平価に換算すると、ほとんどの国で時給千円以上となります。全国平均で713円という日本の低さが際立っています。

 とくに諸外国では、最賃の引き上げを成長戦略の柱にすえて努力しています。低所得層の生活が改善されれば、消費が拡大し、財政面でも、税や社会保険料の担い手が増えます。

 貧困と格差が激しいといわれる米国でも、07年5月成立の法律にもとづいて、約10年間、時給5ドル15セントに据え置かれていたところから、段階的に引き上げられ、09年7月に7ドル25セントにまで上がりました。購買力平価換算で949円です。

 イギリスは1999年に全国一律最賃を導入。その当時は時給706円と、日本との差がほとんどありませんでしたが、09年で1138円まで引き上げました。イギリスの10年間の最賃引き上げ率は61・1%なのに対し、日本はわずか9%です。

 イギリスは、現在の不況下でも最賃引き上げに取り組んでおり、10月からは時給1164円となる予定です。

成長戦略の柱に

 日本では、1997年〜2007年の10年間で、大企業の内部留保は142兆円から229兆円に急増する一方で、労働者の雇用者報酬は279兆円から253兆円へ大幅に減っています。年収200万円以下のワーキングプアが1000万人以上を超える異常な社会になっています。

 労働者が正社員から派遣などの低賃金の非正規雇用労働者に大量に置き換えられ、大企業が下請けたたきを行ってきたため、それが労働者全体の賃金を下げる圧力となっています。最賃の引き上げは、財界の横暴に歯止めをかけるうえで重要です。

 日本の平均713円という最賃は、労働者がフルタイムで働いても、最低限の生活ができる「生計費」にほど遠いものです。

 全労連の青年部やパート・臨時労組連絡会などが中心に各地で行っている「最賃生活体験」の取り組みは、「病院へ行けない」「1日2食に切りつめた」など、日本の最賃では人間らしく生活できないことを浮き彫りにしています。

 全労連加盟地方組織などがこの間、首都圏、東北、静岡で「最低生計費」調査を実施し、いずれも月額23万円台(時給換算で1300円台)が必要だという結果が出ています。全労連は、当面、すみやかに時給千円以上へ引き上げることを要求しています。

 最賃が生活保護基準を下回る地域は、厚労省調査で、北海道、青森、秋田、宮城、埼玉、東京、千葉、神奈川、大阪、京都、兵庫、広島の12都道府県です。調査は、労働時間を実態よりも水増しし、保護費を低く見積もっているため、実際には、さらに多くの地域で生活保護を下回っているといわれています。

 労働者の要求と運動で、07年に最低賃金法が改正され、生活保護を下回らない水準にすることが盛り込まれました。

 全労連は、今月28日に「最賃・人勧中央行動」を呼びかけるなど、中央最賃審議会のやま場にむけて取り組みを強めるとしています。

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最賃の全国一律時給千円以上への引き上げを求める労働者たち=7日、東京・厚労省前





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