2010年7月12日(月)「しんぶん赤旗」
温室ガス排出
石炭使用発電・製鉄
ワースト15位占める
環境・経済産業両省がこのほど公表した2008年度の日本の温室効果ガス排出実態について、環境NGOの気候ネットワーク(浅岡美恵代表)が分析しました。
日本の温室効果ガス排出量の20%を占める大規模排出源「ワースト20位」のうち上位15事業所が、石炭を大量に使う火力発電所と製鉄部門です。
国内の総排出量の50%を占める153事業所のうち、半分以上の84事業所が石炭などの火力発電所が占め、セメントと化学工業がそれぞれ18事業所、製鉄16事業所、精油14事業所、製紙3事業所となっています。排出量上位4事業所だけで、排出量の少ない約1万2000事業所の排出分にほぼ匹敵します。
日本では、京都議定書が採択された1997年12月以降も、石炭火力発電所へのCO2排出規制はなく、新たな建設が相次ぎました。これが日本の総排出量増加の一大要因となりました。
ところが、欧米では地球温暖化対策として、近年、新規の石炭火力発電所の建設を認めなかったり、二酸化炭素回収装置の導入条件をつけるなど、発生源での排出規制を設ける動きが加速しています。石炭火力発電所のCO2排出量が総排出量の13%に上るカナダも6月、電力部門の温室効果ガス排出削減対策として、石炭火力発電への規制案を発表。石炭火力発電所51カ所のうち33カ所が2050年までに耐用年数に達するため、効率の悪い石炭火力発電の段階的な廃止を打ち出すなど、大規模排出源への対策がとられようとしています。
温室効果ガスの大規模排出源が、ごく一部の大企業に集中している日本の場合はどうでしょうか。
国内総排出量の50%を占める上位40社のうち、半分の19社は大手電力会社。電力会社の場合、発電出力の変動運転ができない原発を補完するために、石炭火力で発電の調整を行ってきました。安価な石炭に依存しているのは電力・製鉄・化学工業・セメント企業26社にものぼります。
日本共産党は「最大の排出源である産業界に対し、公的削減協定など実績のある施策を実施する」と、国と産業界との公的協定による大規模排出源への抜本的対策強化を提起しています。
削減目標達成のためには、「発電施設も含めた事業所の直接排出量の総量削減」とともに、自然エネルギー利用の発電を促進する固定価格買い取り義務制度を導入することや、2020年までにエネルギー(1次)の20%、30年までに30%を自然エネルギーでまかなうことが必要です。待ったなしの課題です。
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