2010年7月12日(月)「しんぶん赤旗」

政府がまとめた

地方自治法改定とは

行政との「対立」解消口実 議会の弱体化狙う

来年通常国会に提出計画


 総務省はこのほど、地方自治法の抜本改定にかんする基本的な考え方を示した報告書をまとめました(6月22日)。来年の通常国会にも改定案を提出する考えです。「地域主権改革」と称して国の責任を後退させる道を突き進む民主党政権のもとで、首長と議会のあり方をどう見直そうというのでしょうか。

 日本の地方自治体は、憲法で、首長と議会議員がそれぞれ住民の直接投票で選挙される「二元代表制」と定められ、地方自治法で議会と執行機関(首長・行政)のそれぞれの役割と権限、関係が明確にされています。ところが、報告書は、この「二元代表制」をゆがめる方向を打ち出しています。「現行制度の枠内」といいながら、事実上の改憲にもつながりかねない方向です。

 報告書はまた首長と議会のあり方について、「長と議会の対立」で行政運営に支障が生ずることがないようにするとして、議会が首長の行政執行の事前段階から責任を持つか、事後に関与すべきだと提起しています。前者の場合、議員が副市長など執行機関に入ることを提案。後者の場合は検査権・調査権を行使するとし、自治体が、いずれかを選択できるようにするとしています。

都道府県の議長会は反対

 しかし、「対立」があるからといって、議員が副市長を兼職しなければならない理由はどこにもありません。むしろ首長に対する議会・議員の監視機能が弱体化することにつながります。都道府県議長会も「議員を執行機関の構成員とすることでさらに執行機関を強めることになる」(意見書)と反対しています。

 議員・議会の役割を事後に限定することも、企画立案機能や予算の承認など議会の役割を低下させるものです。

 現行の監査委員や外部監査については廃止を含めて見直し、自治体から独立した機関による外部監査などを提起。会計制度についても、自治体とは根本的に違う株式会社の財務会計制度にならう方向を打ち出しています。

 都道府県議の選挙区域は自治体任せにすることも提起。民意をゆがめ、さらなる市町村再編や道州制につながる危険性を抱えていることは見逃せません。

改変の背景に民主の改憲

 地方自治制度の根幹である「二元代表制」の改変を打ち出しているのは、民主党が「憲法提言」(05年)で、憲法を改定して地方自治体が「二元代表制」をとるかどうかを自治体の選択にすることを提起していることが背景にあります。

 しかし、いま憲法と地方自治法が定める制度を変える必要性に迫られている地方自治体などありません。

 「二元代表制」のもとで首長・執行機関と議会議員が融合することになれば、現在でも強大な執行権限をもつ首長に対して、議会、議員の役割と権限がより縮小することになりかねません。

 多くの地方自治体で求められているのは、首長の行政運営に住民の意思がより反映されること、そのためにも議会の構成と活動に民意が公正に反映され、民主的運営、行政に関するチェックと調査、政策能力の向上がはかられることです。(深山直人)





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