2010年7月8日(木)「しんぶん赤旗」
南米にドル脱却の風
共通通貨スクレ、3カ国目
【メキシコ市=菅原啓】南米のエクアドルとベネズエラは6日、米州ボリバル同盟(ALBA)の地域共通決済通貨スクレによる初の決済を実施し、貿易分野における米ドルの支配からの脱却に向けて新たな一歩を踏み出しました。
富の流出防ぐ
スクレは、昨年4月にベネズエラで開かれたALBA首脳会議で、当時の加盟6カ国とオブザーバーだったエクアドルが導入で原則合意。今年2月にベネズエラとキューバの間の貿易決済で初めて使用されました。今回のエクアドル・ベネズエラ間の使用開始によって、スクレ使用国は3カ国となりました。
今回は、エクアドルからベネズエラに輸出したコメ5430トンなどの決済をスクレ(=1・25ドル、約110円)で行いました。手続きは、ベネズエラの首都カラカスの大統領府内で、同国のチャベス大統領、エクアドルのコレア大統領が立ち会って実施されました。
スクレの発案者でもあるコレア大統領は、ドル決済のために外貨準備としてドルを保有する必要があったが、スクレ決済によって、「必要とされるドル保有額は少なくなり、国の富の流出を防止することになる」と指摘。スクレによりドル依存の打破が開始されると語り、ドルの覇権から各国を解放する地域決済通貨の重要性を強調しました。
決済の増大へ
チャベス大統領も、エクアドルとのスクレ決済開始を「歴史的な出来事だ」と評価。米国からの妨害があっても、スクレの前進を止めることはできないと語りました。
今回の決済額は約600万ドル相当。エクアドル政府は年末までに両国間のスクレ決済総額が2400万ドルに達し、来年以降はさらに増大し、中小企業の輸出拡大にもつながるとの見通しを明らかにしています。
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米州ボリバル同盟(ALBA) 米国主導の米州自由貿易圏(FTAA)構想に対抗して、ベネズエラのチャベス大統領が提唱し、2004年に発足した中南米・カリブ海の地域グループ。市場優先の競争原理に代わって、相互支援と協力、連帯の精神での共同を進めるとしています。現在の構成国は8カ国です。
スクレ 「域内統一決済システム」のスペイン語の頭文字。ALBA加盟国内の貿易決済用に使用し、紙幣や硬貨の形では流通しない仮想通貨です。チャベス大統領が提唱し、2009年10月のALBA首脳会議で導入を正式決定。