2010年7月8日(木)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
児童文学作家の後藤竜二さんが亡くなりました。67歳。惜しまれる作家の代表作の一つ、『白赤だすき小○の旗風』(絵・岡野和=新日本出版社)は、江戸時代末の1853年に南部藩で起こった小○一揆を描きます▼のぼり旗に染め抜いた「小○」は困る。圧制に困り耐えかねた民百姓は、四十九(始終苦)カ条の要求をつきつけました。岩手・青森にまたがる南部藩は、一揆がもっとも多発した藩です▼三陸海岸の村々は、二重の支配に苦しんでいました。藩の年貢や御用金の取り立て。藩を抱き込んでのしあがった商人の横暴。民衆は、4年前にも一揆で敗れたばかり。しかし、「百姓天下」の世をめざし、再び立ち上がります▼藩内ではらちがあかない。仙台の民百姓と結び仙台藩を揺さぶり、仙台藩の仲介で南部藩を動かそう―。指導者は、時代をみすえ勝機ありと判断していました。開国を求める欧米の列強。対して、右往左往の幕府。財政危機に陥り、お家騒動に明け暮れる藩…▼一揆の民は、役人どもをけちらし国境を越え、仙台城下に入り、ついに勝利します。よろこびの結末にいたる人々の苦悩と人生の転変の物語に、作者の熱い思いがこもります。たとえば、4年前の一揆に加わりながら後に悪徳商人の部下となった若者の逸話です▼彼はいいます。百姓が年貢をまけてくれと泣きこむみじめなたたかいの時代は終わった。いまは金と才覚の世の中よ。その彼も、“金の時代”の非道を思い知り、最後は決戦におもむくのです。