2010年7月5日(月)「しんぶん赤旗」
中国・新疆ウルムチ暴動から1年
政府、格差是正へ本腰
少数民族の不満 依然根強く
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【北京=小寺松雄】昨年7月に中国・新疆ウイグル自治区の区都ウルムチで、ウイグル族と漢族がそれぞれ騒乱状態を起こした暴動事件から5日で1年になります。一連の事態は、2008年のチベット暴動とともに、少数民族の不満を浮き彫りにしました。
今年5月、中国共産党と政府は新疆ウイグル自治区問題での合同会議を開きました。同自治区に絞った対策会議は中華人民共和国建国以来、初めてです。
会議では胡錦濤党総書記・国家主席が特に同自治区の経済の底上げを力説。「2015年までに自治区の1人当たり域内総生産(GDP)を全国平均に到達させる」と提起、各種事業や企業へのてこ入れ策を示しました。
同自治区の1人当たりGDPは全国平均の4分の3程度。まず経済水準を平均まで引き上げ、さまざまな矛盾の解決に向けたけん引力にしようという方針です。中国中枢部に詳しい関係者は「昨年の事件がよほどショックだったのだろう」と言います。
同自治区の住民は、約40%が漢族、60%が少数民族。ウイグル族は約45%を占めます。自治区トップの共産党書記は漢族が歴代務め、ウイグル族は自治区主席という方式が続いてきました。
今年4月、15年間にわたり書記を務めてきた王楽泉氏が党中央の要職に移り、後任に別の漢族幹部が就きました。事件1年を機にした人事とみられます。
経済の面でも、石油、天然ガスなど資源関係の大企業幹部は漢族が中心で、農民が多数を占める少数民族との間の経済格差も深刻です。
5月の会議では「民族の団結」「文化建設」などの言葉はありましたが、少数民族対策の具体的措置は示されませんでした。
この3年間、同自治区で生活してきたある日本人は「ウイグル語やその文化は必ずしも大切にされていない。少数民族への差別は感じる」と述べています。
少数民族問題は「テロ対策」という一面もあります。6月には中国公安省が「ウイグル独立をめざすテロ組織、東トルキスタン・イスラム運動につながる幹部を摘発した」と発表しました。
5月の会議では胡主席も「民族の分裂を図る勢力」との引き続く闘争を呼び掛けました。暴動から1年となる5日をはさむ3〜11日には、テロ対策を中心とした中国とパキスタンの合同軍事演習が寧夏回族自治区で実施されています。
▽経済の発展▽少数民族の伝統維持と異民族間の団結▽テロ対策―この3分野をどう統一的に進めていくのかが問われています。
ウルムチ暴動 2009年7月5日、新疆ウイグル自治区のウルムチでウイグル族を中心とするデモが暴動状態となり、主に漢族の商店などを襲撃。7日にはこれに反撃する形で漢族中心のデモがあり騒ぎが拡大。当局発表によれば死者は200人以上。同年6月に広東省の工場で漢族とウイグル族が衝突した事件がきっかけとされています。