2010年7月4日(日)「しんぶん赤旗」
きょうの潮流
「バナナのたたき売り」について調べてみました。うーん、なかなか奥が深いではないか▼日本のバナナ大量輸入は、1908年からといいます。台湾産でした。業者は、まだ青いバナナを陸揚げし市場で競りにかけました。しかし、運ぶうちに熟れてしまったりして、競り売りできない品もあります▼そんなバナナを、露天商らが売りさばきました。彼らは、おかしく威勢のいい文句で客を集めます。「バナナのたたき売り」事始め。北九州市のJR門司港駅近くに、「バナナの叩(たた)き売り発祥の地」の記念碑が立っています▼「アセチレン灯のにぶい光の下で、黄色くうれたバナナを戸板にならべ、だれとはなしに産まれ伝わる名セリフは大正初期〜昭和十三、四年頃まで不夜城を呈し…」(碑の説明文)。バナナの産地・台湾は、明治の政府が武力で征服した日本初の植民地でした。一方、バナナのたたき売りは芸として広まります。門司流、熊本流、関東流などです▼いまでは、気前のいい安売りの代名詞でもあります。菅首相の消費税増税の値引き演説が、「バナナのたたき売りみたい」といわれるように。年収200万円以下の家族に消費税を戻す、300万以下だ、いや400万以下で…▼ところで、映画に登場するバナナのたたき売りにはサクラがつきものです。場を盛り上げ、客を買う気にさせる。が、首相の周りにはいないようです。身内の民主党内も冷ややかに。やはり、首相が売り込む増税バナナは、食えた代物ではありません。