2010年7月3日(土)「しんぶん赤旗」
「不法移民に市民権を」
米大統領 包括的改革訴え
【ワシントン=西村央】オバマ米大統領は1日、ワシントン市内で不法移民問題について演説し、小手先の修正ではない包括的な移民政策の見直しが必要だとの考え方を示し、共和党にも協力を求めました。
オバマ氏は、現在米国に1100万人の不法移民がおり、その多くがより良い暮らしを求めて渡米し、低賃金の労働で米国経済を下支えしているとの認識を表明しました。
そのうえで「彼らは不法であることを認め、必要な罰金を払い、滞在資格を得、英語も学ばなければならない」と指摘。移民抑制を優先する共和党の一部とは一線を画しながら、不法移民に市民権取得の機会を与える包括的改革の必要性を訴えました。
さらに国境管理を強化し、不法移民を雇用する事業者の取り締まりを徹底する方針を示しました。
またメキシコと国境を接するアリゾナ州が4月、不法移民を犯罪者とみなし、拘束や尋問の対象とする権限を警察に付与する州法を採択したことについて、オバマ氏は「計画性を欠いたもの」との見解を示しました。
解説
制度改革は大統領公約
中間選挙控え争点に
オバマ米大統領は2008年の大統領選挙で、移民制度改革を公約として掲げていましたが、この問題で演説をしたのは今回が初めてです。
米国の不法移民は、白人米国人が嫌う厳しい肉体労働を担う一方、雇用の“調整弁”としても用いられてきました。好況時には都市部の建設ラッシュなどで安価な労働力として使われる一方、不況ではまっさきに首を切られてきました。
また不法移民の増大の背景に、1994年発効の北米自由貿易協定(NAFTA)が隣国メキシコの農業・畜産を壊滅状態に追い込んだこともあります。
ブッシュ前政権下でも不法移民規制法案が議会にかけられましたが、移民の間で反対の声が強く成立していません。
今回のオバマ氏の演説は、11月に中間選挙を控え、この問題が再び争点として浮上することを見越したものといえます。(山崎伸治)