2010年7月2日(金)「しんぶん赤旗」
民主党「Q&A」の言い訳、本音…
民主党が内部向けに出している「参院選マニフェストQ&A」。国民の期待を裏切り、公約を守れないことに対する「言い訳」集ですが、言い訳にもならない中身や、逆に浮かび上がる本音をみてみると―。
与党になって変えるなら「国民との契約」といえません
Q/総選挙と参院選のマニフェストが違う
A/総選挙のときは野党のマニフェスト。今回は与党のマニフェスト
マニフェストは「国民との契約」といっていたのは民主党です。それが与党になると変わるものだなんてサギ同然ではないですか。別の回答では「マニフェストは生き物であり、環境や状況の変化に応じて柔軟に見直すことも重要である」とまでのべています。
国民との契約を守れないのは「環境や状況の変化」のせいではありません。アメリカや財界にものがいえないから。菅政権になってその忠誠ぶりはいっそうひどくなりました。
普天間基地問題では県内「移設」と全国への訓練拡大を求めるアメリカの圧力に屈しました。消費税増税を「一刻も早く」と求める日本経団連の方針にそって、消費税増税と法人税減税をセットで公約しました。
野党と与党とでは公約も変わるというのなら、国民はなにを信頼すればいいのでしょうか。
消費税「上げる」と明記 大企業減税の穴うめごまかし
Q/なぜ消費税を上げるのか
A/ムダ遣い根絶だけでは社会保障の基盤強化に不十分
マニフェストでは、「消費税を含む税制の抜本改革」としかいえなかったことを、Q&Aではずばり「なぜ上げるのか」と言い切っています。“頭隠して”の類でしょうか。
しかし、政権交代からまだ1年もたっていないのに「ムダづかいの根絶だけでは、国の財政に対する市場の信認維持や社会保障の基盤強化には不十分」といわれてだれが納得するでしょうか。
ムダづかいという点では、軍事費と大企業・大資産家優遇税制など、「聖域」にはメスが入っていません。
そもそも、今回のマニフェストでは、消費税の増税と法人税減=大企業減税がセットで提起されています。経産省は、法人税を40%から25%に引き下げるとしており、9兆円の税収減になります。消費税を10%にあげても、そのほとんどが大企業減税の財源として消えていく計算です。
「議論」を入り口に一気に増税へ
Q/総選挙で「消費税は引き上げない」と断言してきた。(消費税増税は)マニフェスト違反では
A/任期中に一切議論しないといってきたわけではない
問いにあるように、民主党は消費税など上げなくても、ムダを削ったり、予算を組み替えれば、10兆、20兆円の財源は確保できると豪語してきました。
菅首相自身、昨年の総選挙で“補正予算も加えて100兆円もあるのに財源がないといえるのか”と自民党を批判していました。
その舌の根もかわかないうちに、消費税増税に向けて協議を始めるなどということは明白な公約違反です。
「まず議論から」というのは、国民いじめを押し付けるための常とう句です。
しかも、Q&Aでは、今年度内に結論をまとめ、速やかに法案を提出、成立をはかるといっています。
いったん議論をはじめたらエスカレーター式に増税へと一気に突き進もうというねらいは明りょうです。
税収減を消費税で確保 否定の根拠示せない
Q/なぜ法人税率は引き下げるのか
A/消費税増税は法人税減収対策との指摘はあたらない
ここでもマニフェストで断言できなかった「法人税引き下げ」を問いの形で認めています。しかも、その言い訳は「国内企業の競争力が低下している」からというだけ。法人税を引き下げても内部留保を増やすだけという専門家の指摘には何も答えていません。
一方で、日本共産党の批判を意識して、「法人税引き下げによる減収を消費税で確保するとの指摘もあるが」と自問しています。しかし、答えはなんの根拠も示すことができずに、「指摘はあたらない」というだけ。
いまでも大企業には研究開発減税などの優遇税制があり、ソニーは12・9%、パナソニックは17・6%しか法人税を納めていません。三大メガバンクは、10年以上法人税をまったく払っていません。
Q&Aは、なぜ法人税を引き下げるのか、説明不能状態です。
二つの聖域にメス入れられず財源を示せない
Q/マニフェストの所要額はいくらか
A/確定的に申し上げるのは難しい
これまで、マニフェストとは期限・財源・実現方法などを具体的に示したものだと説明してきたのは、民主党自身ではなかったでしょうか。
民主党が自分の政策の所要額もいえなくなってしまったのは、軍事費と大企業・大資産家への優遇税制という「二つの聖域」にメスを入れることができないからです。
日本共産党は、年間5兆円にのぼる軍事費や、3370億円にもなっている米軍への「思いやり予算」、米軍再編費などに、抜本的な歳出削減のメスをいれます。
下げすぎた所得税・相続税の最高税率を元に戻し、巨額の内部留保をため込んでいる大企業への優遇税制を改めるなど歳入の改革とあわせ、当面7兆円から12兆円程度の財源を確保します。
軍事費・ムダな大型開発にメス入れられない
Q/ムダ遣い根絶で9.1兆円の財源確保と言っていたのでは?
A/引き続き目標実現に努力していく
民主党は09年総選挙のマニフェストで、特別会計を含めた国の総予算207兆円を見直し、ムダ遣いをただせば、子ども手当など新規事業に必要な9・1兆円の財源が生まれると主張してきました。
しかし、民主党がムダ遣い根絶の“切り札”としている事業仕分けでも、約6000億円しか削減できませんでした。これで、「目標の実現に向けて努力をしていく」といわれても、だれが信じられるでしょうか。
ムダ遣いというなら5兆円にのぼる軍事費を大幅削減し、1メートル1億円もかかる環境破壊の東京外環道計画はやめ、高速道路の無料化も中止すべきです。年間320億円もの血税を政党が山分けする政党助成金や、これまで9000億円をつぎ込み、破たんが明白な高速増殖炉「もんじゅ」もやめるべきです。
「10%」を明記 国民の批判に右往左往
Q/以前は3%といっていたのに、なぜ5%上げて10%なのか?
A/一方で「引き上げや使途はこれからの議論」他方で「社会保障の財源のため」
民主党はマニフェストでは、消費税引き上げも税率も触れていませんが、Q&Aでは「自民党が提案している10%は一つの参考と考えている」と税率まで明記し、菅首相の発言を追認しています。
同時に、2005年の総選挙のときには、消費税を5%から8%へと「3%の引き上げ」を主張していたこととの関係については05年のときは年金財源に充てるといっていたが、医療・介護などの分野にも充てるから10%だと説明しています。
しかし、もともと消費税増税は、法人税率引き下げという大企業減税の穴埋めのためのものです。
しかも“自民党の提案を参考に”というように、さしたる根拠もなく打ち出したのは明らかです。
その一方で民主党は、「消費税の引き上げ幅やその後の使途は、これから議論する」と右往左往しています。
県民同意なしでも基地押し付けるねらい
Q/普天間基地移設について…沖縄を含めて関係地域の同意をどうやって取り付けるのか
A/日米合意を踏まえるという原則はしっかり守る
「国外、最低でも県外」という公約を鳩山前首相退陣とともに完全に投げ捨てた菅政権。このQ&Aも、「地元の同意」より「日米合意」を優先する姿勢が明確です。
民主党が「しっかり守る」のは、普天間基地に代わる新基地を名護市・辺野古に建設し、米軍訓練を鹿児島・徳之島をはじめ全国に拡大するという「日米合意」です。
合意では、8月末までに、新基地の位置・工法などの検討を終えるとしています。問いでは、関係自治体の「同意をどうやって取り付けるのか」のあとに、「同意なしでも米国と合意するのか」とまであります。
答えは、「誠心誠意説明し、理解を求める」というだけ。「同意」を取り付けるとは決していいません。「同意なしでも米国と合意する」のが本音なのだとすけてみえます。
負担軽減どころか被害拡大 カラ約束は通じません
Q/「沖縄の負担軽減」についても8月に米国と合意するのか
A/日米で合意した具体策についてできる限り早く中身をつめる
沖縄県民に巨大な米軍新基地の建設を押しつけておいて「負担軽減に全力」(民主党マニフェスト)などと言ってもむなしいだけです。
しかも、「負担軽減」の中身は「日米合意」の範囲内。徳之島や本土に米軍訓練の「分散移転」するというものです。
これが負担軽減にはつながらないことは、嘉手納基地の経験が物語っています。
2006年の日米合意で嘉手納基地の訓練の本土移転が合意されましたが、かえって外来の米軍機が多数飛来し、基地被害が深刻化したのです。
「できる限り早くつめる」などといっても沖縄県民にはもはや通用しないカラ約束です。
真の「負担軽減」は、県民世論が一番に求めている普天間基地の無条件撤去以外にありません。
記録問題解決するならなぜ社保庁を民営化したのか
Q/「消えた年金」については、…本当に2011年度までに解決できるのか
A/集中的に取り組む
5000万件にのぼる不明の年金記録のうち持ち主が判明したのは、まだ28%。11年度までに解決できるメドさえたっていません。
ところが、「政権交代後5月末現在で27万件の記録を統合」「厚労大臣の下に『年金記録回復委員会』を設置し(た)」など、“実績”を誇るばかりで、「解決できるのか」という問いに確たる答えはなし。「紙台帳の記録とコンピューター上の記録との全件照合に着手する」というだけです。
しかも、民主党政権がやっていることはこれに逆行。1月、公的年金の運営管理を担う社会保険庁を解体・民営化し、「日本年金機構」を発足させました。野党時代には「年金記録問題がうやむやになる」と反対していたのに、です。
現在の事態は民営化が招いた結果であり、民主党政権の責任は重大です。
「速やかに法案成立」スケジュールを明記
Q/(消費税増税の)超党派協議というのは、期限を区切るのか
A/(増税の)改革案は2010年度内にとりまとめる
菅首相は、消費税増税は「2年から3年後の話だ」とのべ、まだ先の話であるかのようにのべます。しかし、消費税増税が、まさに切迫した問題だということが、このQ&Aには示されています。
Q&Aは増税の方針を「2010年度内にとりまとめる」とし、民主党が呼びかける「超党派の協議」に野党が応じなくても「民主党中心に、2010年度内の改革とりまとめを目指す」と明記。「その後…速やかに法案を提出し、成立を期したい」と明記しています。10年度中に増税方針を決定し、11年度にも増税の法案を強行しようというのです。
同時に「今回の参議院選挙で国民の理解が得られれば」、増税の「議論の出発点に立てる」ともあります。消費税増税に一貫して反対を貫く日本共産党が伸びれば、増税勢力の出はなをくじく痛打となることは確実です。
消費税増税「大連立」の正体がここに
Q/(財政の公約は)自民党が通常国会に提出した「財政健全化責任法案」とよく似ている。意識したのか
A/同様の問題意識を持っていると言うことであり、大変心強い
自民党の「財政健全化責任法案」は「財政の健全化」の趣旨は消費税を増税することだとはっきり書いてあります。民主党が「大変心強い」というのも無理からぬことです。
実際、菅首相は「自民党が提案している(税率)10%という数字を一つの参考とさせていただきたい」と明言。消費税増税の「超党派協議」を呼びかけました。自民党の谷垣禎一総裁も「受けて立つ」と表明。公明党やみんなの党も先々は消費税増税の立場です。
「赤信号みんなで渡れば怖くない」とばかりに、消費税増税の大連合をつくろうというねらいです。79年の総選挙で日本共産党が躍進して一般消費税計画を撤回させたとき、週刊誌は「共産党勝って『増税なし』サンキュー」(『週刊新潮』)と報道。消費税に一貫して反対している日本共産党の前進こそ増税を許さない力です。
企業・団体献金禁止 前提つけて先送り
Q/(マニフェストでは)「個人献金促進の税制改革にあわせて」とあるが、企業・団体献金禁止を先延ばしにする理由ではないか
A/企業・団体献金を禁止する以上、個人が寄付しやすい環境をつくることは不可欠
政治とカネの問題で国民世論に背を向ける民主党の本音をあぶりだしています。
総選挙では、「政治資金規正法を改正し、その3年後から企業団体の献金及びパーティー券購入を禁止する」としていました。
そのときもなぜすぐ禁止しないのかが問われましたが、今回は、法改正に「個人献金促進の税制改革」という前提をつけたのです。
しかし、企業・団体献金を受け取らないことなら、法改正なしでもすぐに実践できることです。
「個人献金促進」といっても、右手で政党助成金、左手で企業・団体献金を受け取っているような党に、すすんで寄付をしようと思う国民がどれだけいるのでしょうか。日本共産党は、企業・団体献金を1円も受け取らず、国民の浄財だけで活動しています。