2010年6月30日(水)「しんぶん赤旗」
サミットどうみる
G8の地盤低下、鮮明に
記者座談会
カナダで25〜27日に連続して開かれた主要8カ国首脳会議(G8サミット)、20カ国・地域首脳会合(G20サミット)について、現地トロントで取材にあたった小林俊哉、田中一郎両記者と東京・外信部が話し合いました。
国際協力が重要
A G8は存在感が薄かった。総花的な首脳宣言を採択したが、新味はない。途上国への50億ドルの「母子保健」支援も、G8が5年前に約束した500億ドルの支援増額がいまだに未達成だと、招待されたアフリカの首脳から指摘されてしまった。
B 非政府組織(NGO)からも、援助総額が増えないなかで新しい方針を打ち出しても「同じお金を差し替えているだけ」との批判もあがった。
C これまでのさまざまな約束の進行状況を点検するといって「説明責任」を合言葉にしたG8だったが、これでは求心力の低下を逆に印象づけたようなものだ。
B 安全保障面でも、韓国の哨戒艦沈没事件に関連して、北朝鮮に挑発的行動をしないよう警告することを首脳宣言に盛り込んだが、中心となる国際協議の場はむしろ国連安保理や6カ国協議だ。気候変動問題などは、さらに幅広い国際協力が重要となる。
C G20に国際経済協力の中心の場が移ってしまったので、G8は安全保障面での国際協力を強調するが、結局、その面でもG8の影響力の低下を示した。
A 米国内でもG8がより多様な声を反映した枠組みに移っていくだろうとの指摘が出ている。課題に応じてさまざまな国際枠組みがありうるのに、G8は“西欧中心の国際構造”という古いパターンに固執しているという批判がある。
B 米政府高官も、「G8にアジアのメンバーは日本しかいない。しかし、アジアで台頭している国はいくつもある」と述べ、G20重視の姿勢を強調している。
「出口戦略」議論に
A G20サミットが開かれるのは4回目だが、前回の会合(昨年9月)で国際経済協力の「第一の協議体」として位置づけられてからは最初の会合だ。
C 注目されたのは、リーマン・ショック以来の世界経済危機に対してとられた膨大な財政出動と金融緩和策からの「出口戦略」をどう打ち出すのか、だった。
A とりわけギリシャ危機で、財政難の国家そのものを標的にして金もうけする投機マネーが暗躍し、国家が破たんしかねない事態が起きている。こうした投機マネーへの規制とともに、財政再建が差し迫った課題であることは間違いない。
B 初日の首脳ワーキング・ディナーも、これがテーマだった。多くの首脳から出たのは「世界経済の回復は予想以上であるが、依然としてぜい弱」という認識であり、財政再建策の「性急な実施には慎重であるべきだ」という指摘だった。
A 結局、首脳宣言は、景気刺激策も財政再建も必要という方向で落ち着いた。2013年までの財政赤字半減目標も盛り込まれたが、達成困難な日本は例外扱いとなった。
C 首脳宣言は、財政再建策のやり方について、くどいほど各国の状況に即した形で行うよう強調している。急激に消費を冷え込ませるやり方は、再び世界的な景気悪化を招きかねないからだ。
A 欧州で打ち出されている財政再建策には、福祉の切り下げや公務員削減などが盛り込まれているため、国民の反発が広がっている。菅首相が宣伝した「財政運営戦略」も、狙いは消費税増税と社会保障改悪だ。
B 財政再建を図る上で、だれに負担を求めるのかが課題だ。
どこの国の首相
A 菅首相は「(カナダの)ハーパー首相の方向と私の問題提起がかみあった」とG8やG20での“活躍ぶり”を誇っている。しかし、焦点の一つだった金融規制強化では「性急な実施が景気低迷を招かないようにする必要がある」と冷や水をかけた。
B オバマ米大統領との首脳会談では、基地を撤去してほしいと願う沖縄県民の思いを逆なでするかのように、新基地建設の日米合意に「真剣に取り組む」と強調した。
C それどころか、日米同盟は「押し付けられて、いやいややっているのではない」と国民に「納得」を迫る考えを示した。どこの国の首相かと思う。
B 沖縄の米軍基地は、沖縄戦後に米軍が住民を追い出し、力ずくで強奪してつくられた。これほど明白な押し付けが半世紀以上も続いているのに、「納得」などできない。
A 県民の苦しみを率直に伝える姿勢はどこにもみられなかった。