2010年6月28日(月)「しんぶん赤旗」
主張
比例定数削減
国民の声締め出す暴挙許さず
民主党が参院選挙のなかで、国会議員の定数とりわけ衆院の比例定数を削減するとの主張を強めています。枝野幸男幹事長は、比例定数を80削減する法案を、早ければ参院選後の臨時国会に提出する方針を明らかにしました。
比例定数の削減は民主党のかねての主張です。参院選のなかで急浮上させているのはみずから持ち出した消費税増税の評判が悪く、みんなの党などが「身を削るのが先決」と主張しているのを受けたためでもあります。消費税増税への反発を逆手に、国会から国民の声を締め出す比例定数削減を進めるとは、言語道断の極みです。
「死に票」の弊害が深刻
民主党のマニフェスト(「政権公約」)は、衆院の比例定数を80、参院の定数を40程度削減すると主張しています。昨年の総選挙では衆院の比例定数削減が公約でした。枝野氏は、参院の定数削減は制度が難しいのでまず衆院の比例定数を削減する法案を次の臨時国会に提案すると言い出しています。
自民党は衆参両院の定数を3年後に1割削減、みんなの党は衆院定数を180削減するなどとしています。議員定数削減自体は民主、自民などの一致した要求ですが、民主党の場合、衆院の比例定数削減に的を絞っていることは見過ごせません。
もともと衆院の選挙制度に小選挙区制が導入された際、1選挙区から1人の議員を選ぶ小選挙区制は大政党しか当選できず議席に結びつかない「死に票」が多くなるので、得票に応じて議席を配分する比例代表制と組み合わせるとされてきました。それでも議員定数は当初から小選挙区が300、比例が200で、小選挙区中心の制度でした。しかもその後比例の定数だけが20削減され、ゆがみはいっそう激しくなっています。
民主党が主張するように比例定数をさらに80削減すれば、衆院議員の4分の3は小選挙区で選ばれることになり、いよいよ大政党による議席の独占が進むことになります。「死に票」の弊害が是正されなくなり、国政への民意の反映がますます妨げられます。
今回の参院選では、消費税の増税でも、沖縄に米軍の新基地をつくるという計画でも、「大政党」の民主と自民に違いがなくなっています。もし比例定数が削減され、それで総選挙がおこなわれれば、消費税反対の国民の声も、新基地反対の国民の声も、遠ざけられることになるわけです。
民主党が比例定数の削減をいうのは、まさに悪政を進めるうえで都合がいいからというほかありません。消費税増税の前にまず「身を削って」定数削減をというのは、民意を締め出す点でも、国民に負担を押し付ける点でも、悪政を推進することにしかなりません。
政党助成金の廃止こそ
定数削減を声高に主張し、消費税増税への反発を和らげるというのは、まさに国民だましそのものです。大企業減税の穴埋めの消費税増税を押し付けるため「身を削る」ふりをするというのは、国民をばかにした態度です。
ほんとうに国会議員が「身を削る」というなら、日本共産党以外の党が受け取っている年間320億円もの政党助成金を、まず廃止すべきです。選挙制度は民意を正確に反映する、比例代表制中心の制度にこそ改革すべきです。
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