2010年6月27日(日)「しんぶん赤旗」
主張
大企業減税
隠しても“不都合な事実”
菅直人首相は参院選の第一声で、政権の「新成長戦略」を力説するとともに消費税増税の必要性を改めて訴えました。しかし、菅政権が「新成長戦略」の目玉にしている法人税率引き下げの方針には一言も触れませんでした。
消費税を増税しても法人税減税の穴埋めにしかならないことを知られたくないためです。
民主党は「税制の抜本改革」の与野党協議を呼びかけています。自民党は「受けて立つ」と言い、公明党やみんなの党もゆくゆくは消費税増税の立場です。これらの各党は法人税の大幅減税の方針でも共通しています。
財界団体も本音では
政権の「新成長戦略」は、「国家戦略プロジェクト」として「法人実効税率(地方税を含む表面的な法人税率、現在40%)を主要国並みに引き下げる」としています。民主党の参院選公約も、「強い経済」の目玉政策として「法人税率引き下げ」を掲げています。
「新成長戦略」のもとになった経産省「産業構造ビジョン2010」は、法人税率を「25〜30%」まで引き下げるべきだと明記しています。25%に引き下げれば景気の急降下前の税収で計算すると減税額は9兆円に上ります。消費税5%増税でつくる財源11兆円の大方が費やされることになります。
実態は消費税増税による大企業減税の穴埋めであり、「社会保障のため」「財政再建のため」が口実にすぎないことは明らかです。
消費税増税と法人税減税をセットにした“方針書”をつくったのは日本経団連です(「成長戦略2010」、4月)。財界の方針書を引き写しにして、菅政権は「日本の法人税率は高すぎる」と主張し、それを法人税率引き下げの最大の根拠にしています。
ところが、財界団体の幹部みずからが「日本の法人税は高くない」と本音を明かしています。
「私は昔から日本の法人税は、みかけほどは高くないと言っています。表面税率は高いけれども、いろいろな政策税制あるいは減価償却から考えたら、実はそんなに高くない。今でも断言できますが、特に製造業であれば欧米並みではある」(阿部泰久・日本経団連経済基盤本部長、税制専門誌『税務弘報』1月号)
本紙試算によると日本の大企業の法人税の実際の負担率はソニー12%、住友化学16%、パナソニック17%など、まともに税金を払っていません。法人税減税の最大の根拠が崩壊しています。
経済成長につながらず
法人税減税が経済成長につながるという政権の主張にも民間の経済研究所が異議を唱えています。りそな総合研究所の23日付リポートは、法人税減税は雇用改善や国内設備投資の増加に結びつかず、「企業利益の押上げに終わる可能性」が高いため、「成長戦略とは呼びにくい」とのべています。
法人税を減税しても、巨額のため込み金(内部留保)をさらに増やし、法外な役員報酬や大株主への配当を拡大するだけです。
先の財界団体幹部は別の雑誌で「今の日本の状況下で、消費税率を上げて法人税率を下げようという議論は、3日ももたない」と警戒しています。“不都合な事実”を広く国民に伝えると同時に、日本共産党の躍進で、財界の身勝手な要求に従う「大連合」に明確な審判を下そうではありませんか。