2010年6月26日(土)「しんぶん赤旗」

現行保育制度を解体

政府が要綱 「子ども園」に一本化


 菅内閣は25日、市町村が実施責任を負っている現行の保育制度を全面的に解体する「子ども・子育て新システム」の基本制度案の要綱を決定しました。

 制度の基本設計では、子育て関連の国の財源や労使の拠出金を一括して特別会計をつくり、市町村に交付。市町村は、現金給付(子ども手当)と保育サービスなどをどう組み合わせるか、どのような子育て施策をするか、を独自に決めて提供するとしています。

 どのサービスをどれだけ実施するかは市町村に任されるため、市町村によっては実施されないサービスが出ます。

 給付は(1)すべての子育て家庭向けの個人給付(2)就労状況に応じた給付―の「2段階」とします。

 個人給付は、現金で受け取るか、「一時預かり」などに使うかを個人の選択で組み合わせる仕組みを提示。学校給食費や塾・習い事の利用券に替える方式も検討します。

 就労支援では、現行の保育所、幼稚園を廃止し、新設する「子ども園」に一本化します。それによって現行の保育所最低基準は撤廃。利用者は市町村との契約ではなく、事業所と直接契約することになります。

 利用者は就労状況に応じて「保育の必要性」の認定を受け、認定の範囲内でサービスを利用。超過部分は別料金になる見込みです。料金は「公定価格を基本としつつ…柔軟な制度を検討」としています。

 「子ども園」、そのほかの短時間保育などのサービス、学童クラブの事業者は指定制とし、営利企業の参入促進のために、現在の規制をなくし、運営費を他の事業に使うことを容認します。

 来年の通常国会に法案を提出し、「恒久財源」を確保しながら、2013年度の本格実施に向け段階的に実施するとしています。

解説

全面的市場化狙う

子ども守る視点なし

 菅内閣が決定した「子ども・子育て新システム」の基本制度案は、「利用者本位」「すべての子どもへの良質な生育環境を保障」などをうたっています。

 しかしその中身は、保育への国の責任を投げ捨て、子育てへの国の財政責任をあいまいにして地域格差を広げるとともに、保育を「産業」として強化するために全面的な市場化を指向するものです。

 制度案では、新システムの実施にあたり、成長戦略策定会議などとの連携を図るとしています。菅内閣の「成長戦略」の土台となった経済産業省の「産業構造ビジョン」では、保育の全面的な市場化の方向があけすけです。

 同ビジョンは、現状の幼稚園と保育所に分かれた制度は「市場分割」だととらえています。幼稚園は料金設定が自由なのに対し、保育所は公定価格であるなど「硬直的」だとして「幼保一元化」を求め、一元化した子ども園は、「経営主体がサービス内容と価格を設定」できるよう求めています。

 直接契約で価格も自由となれば、公的責任のもとで担われる現行の保育の仕組みは全面的に解体され、完全に市場で売り買いされるものになります。

 もともと保育所は、子どもの生活を丸ごと支えるという、幼稚園にはない機能を負っています。そのために調理室を必ず置くなどの規制があります。

 基本制度案では、異なる機能をどのように一体的に運営するのかはまったく不明です。

 子どもの視点からではなく、保育をビジネスチャンスととらえ、いかに営利企業がもうけを上げられるようにするかが発想の出発点だからです。

 これをすすめれば、介護分野で起きているように、保育士の待遇も子どもの保育の質も悪化することは避けられません。参院選挙で厳しい審判を下すことが絶対に必要です。(西沢亨子)





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