2010年6月21日(月)「しんぶん赤旗」

ベトナム “新幹線”計画ストップ

「資金あるのか」

国会内外で激論


 【ハノイ=井上歩】ベトナム国会は閉会日の19日、政府が提案した、ほぼ全土を縦断する“新幹線”の開通を目指した「南北高速鉄道」建設方針を反対多数で否決しました。政府はこの大規模プロジェクトに国の近代化をかけていましたが、国会内外での激論の末、異例の決着となりました。

 政府は5月、国会に計画推進方針の承認を求めました。

 計画は、総額約560億ドル(約5兆円)を投じ、ハノイ―ホーチミン市間の約1600キロに最高時速300キロの高速鉄道を開通させるという「スーパープロジェクト」(地元紙)。2035年までの全線開通を目指していました。

 国会は、賛否が真っ二つに分かれる激論となりました。政府は経済発展に伴う交通需要の増大や経済波及効果を強調。賛成派議員は「もはや貧困国ではない」「雇用が生まれる」と主張しました。

“反対”が上回る

 しかし、反対派議員が「どこに資金があるのか」「(地方では)綱をつかんで川を渡っている同胞もいる」と反論。国会外でもメディアが専門家の反対意見を紹介し、読者のアンケート調査では反対が賛成を上回ったと伝えていました。

 方針承認を予定していた国会常務委員会は、事前に賛否を調査して妥協点を探ることまでしたものの、結局、19日の採決で42・19%が反対、賛成が37・53%となり、計画は棚上げとなりました。

 最大の反対理由は資金問題で、投資予定額は現在のベトナムの国内総生産(約915億ドル)の6割にあたる規模でした。政府は、日本の新幹線方式を採用した上で日本からの政府開発援助(ODA)を見込む方針でしたが、確かなめどはついていませんでした。また、計画のずさんさや鉄道分野での経験不足、技術・資材が国内でまかなえないことなども指摘されました。

ODAにも疑問

 この間、ギリシャの財政危機をきっかけに、ベトナムでも国の借金に対する懸念が拡大。対外債務はGDP比約30%に増大しており、ODA頼みへの疑問の声も出始めています。

 今国会で、政府は、2050年までに総額900億ドルを投じてハノイを新時代の首都圏へと拡大する構想も提示しました。

 次期国会以降に引き続き審議される予定ですが、新幹線と同様、資金問題などで実現性に疑問の声が出されています。





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