2010年6月20日(日)「しんぶん赤旗」
“消費税10%は高齢者福祉のため”
菅首相発言のごまかし
際限なき増税への道
マニフェスト発表会見で「当面の消費税率は自民党が提案する10%を参考にする」と言明したことについて菅直人首相は18日、「高齢者にかかる福祉の費用を、新しい税率(10%)でほぼ賄えるようになる」と、消費税増税は高齢者福祉のためであるかのように述べました。これは、国民に消費税増税はやむを得ないと思わせるためのごまかしの議論です。
政府は、消費税を導入するときにも、税率を5%に引き上げる時にも、増税分は社会保障に使うと言っていました。しかし、社会保障はどんどん切り捨てられ、結局、消費税が導入されて22年間で、消費税の税収の総額224兆円は、同時期の法人3税の減収208兆円の「穴埋め」になってしまったのが実際です。
今回の消費税増税の動きも、法人税減税と一体となって出されてきているものです。その大本には財界の要求があります。18日に菅首相と会談した米倉弘昌日本経団連会長は会談後、消費税増税にふれ、「いまの社会保障制度と財政の状況を考えると、(社会保障の)目的税としてやるべきだ」と発言するなど、菅首相を援護射撃しています。財界は法人税率を25〜30%に引き下げることを要求していますが、仮に25%に引き下げたら、消費税を10%に増税しても、そのほとんどは法人税減税で消えてしまいます。
菅首相はさらに、「10%」の根拠として「予算総則では消費税の国の分は、高齢者にかかる費用に充てるということが決まっている」ことを挙げ、「今、5%の現行消費税で言えば、国の分は約7兆。しかし実際に高齢者福祉にかかるものが約17兆。現在でも10兆ぐらい足りない」と述べました。
しかし、消費税を高齢者福祉にあてることが予算総則で明記されていることを「根拠」に、高齢者福祉の財源を消費税だけに求めることは問題のすり替えです。社会保障の水準を落としたくないなら消費税増税をのめ、と国民を脅しつける議論です。
もし高齢者福祉の財源をすべて消費税で充てようとしたら、毎年の社会保障費の自然増約1兆円を賄うためだけでも、消費税率をどんどん上げていかなければなりません。まさに際限のない増税の道です。
消費税は何よりも所得の少ない人ほど重くのしかかる最悪の不公平税制です。これを社会保障の財源にすることは本末転倒です。
社会保障を支える財源は消費税に求める必要はありません。日本共産党の参院選公約が明らかにしているように、年間5兆円にのぼる軍事費をはじめ大型開発などの無駄づかいに徹底したメスを入れるとともに、行き過ぎた大企業・大金持ち減税の抜本的に見直すことなどによって7兆〜12兆円の財源を生み出すことができます。
消費税増税を食い止めるためにも、消費税増税に正面から反対し、国民の立場で財界・大企業にモノを言う日本共産党を参院選で伸ばすことがますます重要になっています。(入沢隆文)
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