2010年6月19日(土)「しんぶん赤旗」
主張
消費税「10%」
財界言いなり大増税許さない
菅直人首相は17日、民主党の参院選公約発表の記者会見で消費税増税の方針をのべ、「超党派」の協議を求めました。しかも当面の税率として、自民党が掲げた「10%」を参考にすると明言しました。
消費税率を10%に上げれば12兆円の大増税、平均的な4人家族では16万円もの負担増となります。
消費税は母子家庭や年金世帯、失業者や不安定雇用の労働者など、どんなに苦しい家計にもかかる税金です。ますます所得が減っている家計に10%の消費税をかければ耐え難い痛みを広げ、冷え込んだ内需に壊滅的な打撃を与えることになります。
大企業減税の穴埋めに
昨年の衆院選で民主党は「必要な財源は『税金のムダづかいの根絶』で生み出す」と国民にアピールしました。やっぱりできませんでしたと、謝って済む問題ではありません。1年もたたずに消費税増税を打ち出したことは、国民に対する許しがたい裏切りです。
民主党政権は年間5兆円に上る軍事費、特に米軍への「思いやり予算」を聖域にし、行き過ぎた大企業減税は見直そうともしませんでした。巨額の浪費を生む高速道路機構を「仕分け」の対象外にし、破たんが明らかな高速増殖炉「もんじゅ」の運転も再開しました。政党の既得権益にほかならない政党助成金も温存しています。
最大のムダづかいや巨額の浪費にメスを入れず、自らの既得権益にしがみついていたのでは必要な財源を生み出せるはずがありません。今年度予算が、過去最大の借金に加えて、1年限りの「埋蔵金」の取り崩しも過去最大という異常極まりない予算編成になったのは、必然的な成り行きです。
見過ごせないのは、民主党の参院選公約が消費税増税と同時に「法人税率引き下げ」を明記していることです。菅政権は18日に発表した「新成長戦略」にも法人税減税を盛り込みました。直嶋正行経産相は法人税の10〜15%減税をめざすとのべています。
歴代の自民党政権はこれまでも大企業に散々減税を繰り返してきました。その結果、日本の大企業の国と地方を合わせた法人税負担率は、表面的な税率(40%)よりもはるかに低く、日本のトップ企業では平均30%程度になっています。すでにヨーロッパ諸国と同じ水準です。社会保険料の事業主負担と税金を合わせた大企業の負担率を比べれば、日本はフランスの7割程度しかありません。
法人税の15%減税で9兆円の減収です。政府は租税特別措置を見直して財源に充てると言いますが、大企業向けの研究開発減税は拡充の方針であり、もっと財源が必要になる可能性さえあります。消費税増税分の8割は法人税減税の穴埋めに消えていく計算です。
増税「大連立」に審判を
菅首相は早速18日、日本経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)と懇談し、米倉会長から「経済界は本当に勇気づけられたと喜んでいる」と大歓迎を受けました。
財界の要求を「丸のみ」して大企業減税のために消費税を増税するやり方は、暮らしと経済を破壊するだけで財政再建にも社会保障の財源づくりにも役立ちません。国民の厳しい審判で、民主党と自民党の「大連立」による、財界言いなりの消費税増税にストップをかけようではありませんか。