2010年6月18日(金)「しんぶん赤旗」
主張
角界賭博汚染
犯罪と癒着の体質一掃せよ
大関・琴光喜が野球賭博にかかわっていたことを認め、7月の名古屋場所を休場することになった相撲界(角界)の賭博汚染は、深刻な広がりを見せています。琴光喜自身が賭博に関連した暴力団関係者に脅されていたことが明らかになったほか、日本相撲協会の調査で賭博にかかわったと認めた関係者のなかには、力士を指導する立場の現役の親方もいたことが明らかになりました。
賭博は犯罪です。しかも巨額の金が動く野球賭博が暴力団の資金源となっていることは公然の事実です。相撲協会はこの際、犯罪と癒着の体質を一掃すべきです。
「賭博は犯罪」を明確に
ことは引退した横綱・朝青龍が問題にされた「横綱の品格」などといったマナーや自主的なルールにかかわる問題ではありません。野球賭博をはじめ金銭や品物をかけておこなわれる賭博行為は、地方自治体が主催する公営ギャンブルや、宝くじ、パチンコなど一部を除けば、法律で禁じられた犯罪です。刑法は賭博に対し「50万円以下の罰金または科料」とし、賭博の常習者は「3年以下の懲役」と定めています。
日本相撲協会が「自主申告」で調査したところ、野球賭博や賭けマージャンなど賭博にかかわった関係者が65人にのぼっていたといいます。このなかには力士だけでなく親方も含まれています。賭博が犯罪であることを踏まえれば、第三者の力も借りて強制的に調査するのは当然で、相撲協会が「自主申告」で関与を認めた関係者の名前も公表しないなどというのは、身内に甘い体質をまたもや露呈したものです。指導的立場にある親方までが関与していたというのは論外で、相撲協会は直ちに名前を公表し、処分すべきです。
とりわけ、これまで関与を否定していた琴光喜がついに認めた野球賭博は、掛け金も巨額で、暴力団のかかわりが深い賭博です。1人の掛け金が1試合あたり100万円単位になる場合もあり、勝った側の掛け金の約1割が暴力団関係者が大半を占める胴元に渡り、暴力団の資金源のひとつとなっています。野球賭博は大相撲関係者の間で日常的におこなわれていたと見られ、野球賭博に再三関与したことを認めた琴光喜の場合も、まさに賭博常習の疑いが濃厚です。
かつて野球賭博は、プロ野球界なども巻き込み、そのために八百長試合がおこなわれているということが問題になり、プロ野球界を「永久追放」となった野球選手もいます。スポーツ界のそうした苦い経験に照らしても、相撲協会はもっと厳しく対処すべきです。
暴力団との関係絶て
相撲界はつい先日も、「維持員」用で一般には入手できない土俵下の「たまり席」が、一部の親方などのあっせんによって暴力団幹部に渡っていたことが問題になったばかりです。繰り返される不祥事は、相撲界と暴力団との根深い癒着を浮き彫りにしています。
社会があげて暴力団と絶縁するよう求められる中、こうした癒着が後を絶たないようでは、大相撲が「国技」と称する余地はなくなります。相撲協会の武蔵川理事長は「ウミを全部出す」といいましたが、閉鎖的な世界で生きる力士の生活面を含め、組織や運営のあり方を一から見直すことなしに、大相撲の再生はないでしょう。