2010年6月17日(木)「しんぶん赤旗」

新政権とテレビ報道

公正さ欠く異常を正せ


 何度か見た光景がまた繰り返されている。首相交代劇に始まる一連の政治報道を見てそう思います。政権が行き詰まると、首相の首をすげ替えて政権浮揚をはかる。安倍、福田、麻生と続いた自・公政権の手法でした。テレビなどのメディアは、なぜ政権が行き詰まったのかを検証することなく、政局の動きと“新政権”への期待を無批判にあおり、この思惑に応えたものでした。

 自公から民主へ、政権は交代してもこの古い手法は変わらないようです。鳩山民主党政権は、わずか8カ月で、国民の期待を裏切り、怒りに包囲されて退陣に追い込まれました。そして首相を代えて民主党浮揚をはかる。まさに自民党と同じ手法です。

 メディア、とりわけテレビは民主に呼応しました。鳩山前首相自身が辞任の原因としてあげた「普天間問題」と「政治とカネ」は辞任で一件落着かのように扱い、この問題の追及は影をひそめました。

 民主党人事、菅新政権の組閣を通して集中的に報じられたのが“脱小沢”でした。5日から8日にかけての番組表には“脱小沢”の文字が躍ります。いわく「脱小沢?人事大胆予測」「脱小沢人事で何ができるか」「脱小沢へ菅新内閣」…あたかも清新な政権が誕生するかのようなイメージが、メディアによって作られたのです。そして、鳩山政権で副総理、財務大臣という大きな責任を負っていたことは、ほとんど問われない状況が演出されました。菅首相自身、小沢氏の責任を追及するつもりはさらさらないのに、メディアを通じてふりまかれた“脱小沢”の言葉が、民主の支持回復の「魔法の言葉」となったのです。

 新内閣発足後は、新閣僚や、民主党幹部による“テレビジャック状況”が続きます。「奇兵隊内閣発足」「最小不幸社会の実現へ期待の船出」「素顔の菅夫妻友人激白」等々。これをいつものご祝儀報道と済ますわけにはいきません。普天間問題をはじめとする数々の裏切りの責任を問うことなく「新政権」として持ち上げることはジャーナリズムとしての責任放棄といわれても仕方ないのではないでしょうか。

 さらに問題は、新政権発足を受けた政治報道に、公正、公平というあるべき視点が貫かれているのかという問題です。日曜日の「サンデーNEXT」「新報道2001」などの出演者は民主党のみ、または民主対自民という古い構図の出演者でした。そこで話されることは「消費税増税」への誘導であり、普天間基地問題での日米合意合理化でした。無条件撤去を求める日本共産党を外すことで、結果的に沖縄県民の多数意見がはずされることになりました。さらに、参院選の候補者でもある新閣僚に「期待してます」とエールを送るなど、参院選を直前にした政党の扱いとして極めて異常、不公平といわなければなりません。

 選挙にさいしては、国民の知る権利にこたえて、多様な選択肢を提供することが、メディアの最低限の責任です。米国・財界いいなり政治を続けるのかどうか―日本の進路が問われる選挙だけに、メディアには権力からの自立、公正・公平の立場を貫くことが厳しく求められます。(荻野谷正博)





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