2010年6月17日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 ノーベルが発明した爆発物、ダイナマイト。その名は、ギリシャ語の「力」の意味の言葉からきています▼ダイナマイトから、破壊力でなく生命力を得ようとした人の手記を読みました。阿波根朝宏さん。先の大戦後に抑留されたシベリアで、「空腹のあまりダイナマイトを食べてみた」といいます▼「それは甘酸っぱいシビレを感じた。もうこれは人間の極限だ」(日野原重明・監修/「新老人の会」編『歌われたのは軍歌ではなく心の歌 語り残す戦争体験』=新日本出版社)。凍土でのつらい労働。寒さ。飢え。阿波根さんは、30代半ばでした▼きのう、旧ソ連の手でシベリアなどに抑留された人々に、朗報がもたらされました。国が「特別給付金」を支払う法律の成立です。名づけて、「戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法」▼抑留は、国際法に反していました。ソ連も日本も、“戦後は捕虜をすみやかに本国に帰す”と定める陸戦条約に加わっていたのですから。日本政府も戦後、ソ連への請求権を放棄します。国家のはざまに見捨てられた元抑留者たちは、みずからの力で補償をかちとる運動をおこしてきました▼中国人や朝鮮人も含め、約64万人が抑留され、6万2千人あまりが異郷で力つきました。私たちが忘れてはならない、苦難と無念です。「(ある抑留者のベッドに)上段から米粒のようなものがポロポロと落ちてきた。シラミである。上段の戦友が死んだのである。死体が冷えるとシラミは逃げ出す」(阿波根さん)





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