2010年6月15日(火)「しんぶん赤旗」
主張
菅首相の答弁
アメリカと財界への追随明白
鳩山由紀夫前首相の辞任を受け、新たに政権を発足させた菅直人首相は、どんな政治を目指すのか―菅首相の所信表明演説に対する衆院本会議での各党の代表質問を、注目して聞きました。
民主党は、衆参両院の代表質問のあと予算委員会で徹底討議すべきだという要求を踏みにじって、16日までで国会を閉幕すると通告しました。政権のボロが出る前に、参院選挙に突入しようという党略的な思惑です。代表質問は、新政権を見定める重要な機会です。
自覚と反省どころか
鳩山前首相が辞任に追い込まれたのは、沖縄の米軍普天間基地問題や、「政治とカネ」、暮らしの問題などで、国民の期待を裏切り、公約を踏みにじって、怒りに包囲されたからです。副総理として共同責任を負ってきた菅氏には責任の自覚と反省が求められるのに、それがないのが第一の特徴です。
菅氏は所信表明演説で、鳩山氏の辞任で「けじめ」がついたとのべました。代表質問では日本共産党の志位和夫委員長が、「政治とカネ」の問題で小沢一郎前幹事長に証人喚問に応じるよう指示するのかとただしたのにも、はっきり約束しません。責任の自覚と反省に欠ける、菅氏の態度は重大です。
普天間基地の問題で菅氏は、反省するどころか、普天間基地を沖縄県内に「移設」するとした日米合意を「踏まえる」と繰り返しました。志位氏は、鳩山前首相が国民の怒りに包まれ辞職に追い込まれたのに、本当にこんな方針で沖縄県民の合意が得られると思うのかと、菅氏を鋭く追及しました。
沖縄県民の怒りは決して一過性ではなく、後戻りすることのない限界点を超えています。菅氏が志位氏の追及にまともに答えず、日米合意を白紙撤回し無条件撤去を求めるべきだという主張に背を向けたのは、県民・国民を踏みにじるというほかありません。
重大なのは、志位氏が、かつて沖縄の米海兵隊は日本を守る「抑止力」ではないと再三発言し、「海兵隊は米国内に戻ってもらう」といっていた菅氏の主張を指摘して、日米合意を踏まえるというのはみずからの主張さえ投げ捨てるのかと迫ったのにさえ、菅氏が「過去といまは違う」としか答えず、「抑止力」を否定しなかったことです。かつての発言と日米合意は、百八十度違っています。みずからの発言に背いても日米合意を実行しようという菅氏の姿勢は、文字通り、アメリカいいなりそのものです。
経済と暮らしの問題でも菅氏には、後期高齢者医療制度の廃止を先送りしたことなどへの反省がありません。志位氏が、「強い」経済・財政・社会保障というのなら、大企業応援から国民生活応援に転換し、社会保障費削減路線による傷跡を治すべきだと求めたのにも、実行を明言しません。菅氏が国民ではなく、大企業を「強く」しようとしているのは明らかです。
「大連立」で増税の危険
志位氏が指摘したように、法人税減税の穴埋めに消費税を増税する財界の要求は、あまりに身勝手です。菅氏は財界が求める消費税増税を否定しませんでした。
菅氏は消費税増税を主張する自民党と検討会議をつくるとし、自民党の谷垣禎一総裁は「本気なら」と応じています。財界いいなりに「大連立」で消費税を増税する企てにも厳しい審判が求められます。
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