2010年6月14日(月)「しんぶん赤旗」

主張

事務所費疑惑

「クリーン」な党に戻れるのか


 菅直人政権で国家戦略相に就任した、菅氏の側近でもある荒井聰氏をめぐって、家賃のいらない知人宅に政治団体の「主たる事務所」を置きながら、巨額の事務所経費を政治資金収支報告書で届け出ていた問題が表面化しています。事務所としての実態がないのに、「事務所費」として支出したことにしていたとすれば、何に使ったのかが当然問題になります。

 菅政権は、鳩山由紀夫前首相が「政治とカネ」の問題などで辞任に追い込まれたのを受けて誕生しました。「クリーンな民主党」に戻るとうたうのなら、事務所費の疑惑も徹底して究明するべきです。

実態のない事務所に

 政治団体の事務所経費には、家賃などの事務所費のほか、光熱水費、備品・消耗品費などがあり、議員会館や自宅など家賃も光熱費もいらないところに実態のない事務所を置いたことにして事務所費を計上、実際には表に出せない政治活動に回すなどの例がまかりとおっていました。安倍晋三政権時代には、佐田玄一郎行革相や赤城徳彦農水相、松岡利勝農水相らの事務所費問題が明らかになり、辞任などに追い込まれました。

 荒井氏の場合も知人宅に自らの政治団体「荒井さとし政治活動後援会」を置いたことにし、2008年までの6年間に4222万円の事務所経費を計上していたものです。事務所になっていた部屋の住人は郵便物がたまに届く程度と証言しており、事務所としての実態はほとんどありませんでした。同政治団体は政治資金パーティーなどで年間1000万円以上を集め、事務所経費以外は荒井氏の別の政治団体に寄付していたことになっています。

 荒井氏や民主党は、「違法性はない」と主張していますが、家賃は払っていなかったことを認めており、4000万円を超す経費が実際には何に使われたのかはわかりません。あわてて公表した「領収書」も、少女漫画本代や食品代、マッサージ代まで含まれるズサンなもので、疑惑が全面的に解明されたわけではありません。

 菅内閣では、荒井氏以外にも、川端達夫文科相や蓮舫行政刷新相の事務所費をめぐる疑惑も指摘されており、疑惑は徹底して解明する必要があります。

 問題は菅首相や仙谷由人官房長官らのこの問題に対する態度です。荒井氏の疑惑が指摘されたあと、説明に立っているのはもっぱら荒井氏本人と民主党の細野豪志幹事長代理で、菅氏も、仙谷氏も、荒井氏を呼んで事情を聞き、それにもとづいて国民の疑問に答えたことはありません。とりわけ菅氏は荒井氏を閣僚に起用した任命権者として、その責任は重大です。

「政治とカネ」の疑惑断て

 菅首相は就任後初の所信表明演説で、鳩山前首相や小沢一郎前民主党幹事長が「政治とカネ」の問題などで辞任したのを受け、「挫折を乗り越え、国民の信頼を回復する」とのべました。そうであるなら、みずからの政権での疑惑を解明することは最優先の課題です。

 菅氏は、辞任した鳩山氏に説明責任を求めることも、小沢氏に証人喚問に応じるよう求めることもしていません。みずから閣僚に起用した荒井氏らの疑惑についてさえ解明の責任を果たさないなら、国民の信頼を回復するなどの発言が、まったくの虚言になります。





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