2010年6月13日(日)「しんぶん赤旗」
宮崎・口蹄疫
雇用も深刻な影響
加工場の労働者 “契約切られた”
宮崎県内で家畜伝染病・口蹄(こうてい)疫の被害が広がるなか、影響は食肉加工など関連企業で働く労働者の雇用に及び、宮崎県労連にも12日、食肉加工工場で契約を打ち切られた男性が相談に訪れました。県労連の村岡弘応副議長、県農民連の来住清太郎書記長らが応対しました。
男性が勤務していたのは、食肉加工の県内大手「ミヤチク」。県や工場のある市町、JAなどが出資している公的な企業です。
男性は、契約社員として27年間、同社の都農工場(宮崎県都農町)で豚の解体作業をしてきました。契約は1年。1頭当たり590円の歩合給でした。
口蹄疫が都農町で発生したため、工場は操業を停止。男性を含め、50人余りの従業員が都農から都城市の本社工場へ派遣され勤務していました。
9日に都城市でも口蹄疫が確認されると、会社は「10日で契約を打ち切り、7月10日付で解雇する」と通告。男性は「きちんと補償をしてほしい」と求めましたが、解雇予告手当は支払われず、「慰労金」が出ただけでした。
男性は「私たちは働く意欲はある。機会があればミヤチクで働きたい」と話します。
村岡氏らは「ミヤチクに企業としての責任をきちんと果たさせるとともに、会社と一緒に国・県に対しても再開への支援などを求めていきましょう」と答え、今後の対応を検討することにしました。
畜産農家が悲鳴
種付け中止 将来は…
「ついに口蹄(こうてい)疫は都城と宮崎市でも。いつ発生するか分からないのが不安だ」。宮崎市内で肉用牛の一貫経営(生産と肥育両方)をしている男性(56)は語ります。
「原因もルートもわからない。畜産農家が不安に感じているのはその点です」と男性。同市で口蹄疫が発生した農家とは知り合いで「本人は獣医師でもあり、消毒など防疫対策をしっかりしていた。なんで彼のところに」と言葉少なです。
男性は「拠点の都城にも発生した。もう宮崎だけの問題ではなく、日本全体、日本農業の問題です」と訴え、防疫対策の強化や発生後の処分の迅速な実施を求めます。
感染拡大防止のため、母牛への種付けは中止されたまま。来年2月以降、子牛がまったく生まれない状況になります。
男性は「買い付けた子牛を育て肥育し、種付け、出産、生まれた子牛の飼育など最低3年はかかります。その間は無収入、一方でえさ代、家族の生活費はかかる。国の支援策の中身が見えず、みんな不安に感じている」と言います。
2007年の「全国和牛共進会」で部門別の首席を獲得したこともある男性。「以前のように再開できたら、12年に長崎で開かれる次の共進会に向け、頑張りたい。宮崎は負けません。見守っていてください」と静かに語りました。